「自転車界のインテル」を生んだ日本で、なぜ配達員に“批判の声”が出ているのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
自転車の部品を開発している「シマノ」が、海外で称賛されていることをご存じだろうか。世界のスポーツ自転車向け部品のシェアは85%で、その高い技術力から「自転車界のインテル」と呼ばれている。そんな企業を生んだ国で、「自転車ヘイト」が起きている。なぜかというと……。
同じ道を歩んではいけない
台湾も日本と同様に、かつては自転車が歩道を走り回っていたが、インフラとして自転車活用を推進した結果、自転車専用レーンを多く整備するようになったのだ。やや自画自賛になるが、台湾メディアは海外の自転車愛好家の声を紹介している。
「いまでは4,500kmを超える自転車専用レーンが整備されている。台湾は自転車に向いていない場所から、自転車愛好家たちの天国へと変化した」(TAIWAN TODAY 2018年1月4日)
では、「自転車界のインテル」を排出し、保有台数でも台湾よりも圧倒的に多い日本の自転車専用レーンはどうか。その進捗(しんちょく)状況が分かる一つの目安として、国土交通省のWebサイト「自動車利用環境の整備」には、「自動車専用通行帯の整備推進」としてこんなことが誇らしげに語られている。
「ウィズコロナの新しい生活様式で想定される自転車通行量の増加へ対応するため、東京23区内の国道及び主要都道において、自転車専用通行帯等を令和2年度に約17km整備します」
なぜこんな体たらくなのかというと、やはり政治家がこの分野に積極的ではないからではないか、と個人的には思う。
役所の尻を叩いて、橋をつくったりトンネルをつくったりという巨大な公共工事にこぎつければ、政治家側にはゼネコンからの献金や選挙支援などの見返りがある。しかし、自転車専用通行帯をつくる程度の工事では見返りは少ない。自転車メーカーはNTTや東北新社のような許認可制ではないので、高額接待もしてくれない。
つまり、自転車環境がなかなか整備されないのは、ぶっちゃけ、この分野に政治家や役人が動くだけの「うま味」を感じられないことが大きいのだ。だが、自転車で世界覇権を狙うために官民で盛り上げていくようなムードがなければ、「自転車界のインテル」もわざわざ日本を拠点とする意味がなくなってしまうかもしれない。
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