「自転車界のインテル」を生んだ日本で、なぜ配達員に“批判の声”が出ているのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
自転車の部品を開発している「シマノ」が、海外で称賛されていることをご存じだろうか。世界のスポーツ自転車向け部品のシェアは85%で、その高い技術力から「自転車界のインテル」と呼ばれている。そんな企業を生んだ国で、「自転車ヘイト」が起きている。なぜかというと……。
おかしな現象が起きる背景
そこまで成熟した自転車文化があるのだから当然、マナーも成熟していなくてはおかしい。しかし、現実は先ほども申し上げたように、「自転車へのバッシング」が高まっている。かなり以前から、欧米諸国よりも自転車を頻繁に使うカルチャーが根付いているわけだから、普通に考えれば、社会のルールも整備されマナーも浸透されているはずが、そうなっていないために全国でトラブルが多発しているのだ。
なぜこんなおかしな現象が起きるのか。よく言われるのが、日本には欧州などのように自転車専用レーンが少ないので、自転車が停車しているときは車道または歩道というグレーで、治外法権的な存在になってしまっているからだという指摘だ。
これはかなり昔から問題視されている。例えば1999年2月に設立された自転車活用推進研議員連盟という議連の設立趣意書にはこんなことが書かれている。
「我が国において自転車は、他の先進国に例を見ない歩道通行可の制度が一般化しているため、歩行者との間にトラブルを生じ、また車道においては自転車レーンがないため、高齢化社会の到来もあいまって安全確保に問題を生じている」(自転車活用推進研究会のWebサイト)
もちろん、こういう問題を抱える国は日本だけではなく、アジアには多い。ただ、世界的な自転車人気や、自転車産業の成長とともにルールが整備されていくのが一般的だ。その代表が、国策として自転車産業を応援して、ジャイアントやメリダを世界トップレベルの自転車メーカーにした台湾だ。
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