なぜ、ノートンは3Mに“逆転”を許したのか 組織を変革できない企業の末路:アジャイル型(3/4 ページ)
VUCA(予測ができない)の時代、組織体制を変えられない企業はどうなってしまうのでしょうか。なぜ今、アジャイル型組織(変化に対応しながら、製品を開発できる組織)へと生まれ変わる必要があるのでしょうか。
アジャイル型組織は、IT業界から生まれた組織形態です。もともと1990年代半ばに、迅速かつ柔軟性を持ったソフトウェア開発を行う手法として出てきたアジャイルソフトウェア開発手法に端を発した組織形態を指します。
従来のソフトウェア開発は、ウォーターフォール型の開発が中心でした。ウォーターフォール型は、あらかじめ何を作るかを明確にし、作業工程を分割して、前工程への後戻り(手戻り)を最小限にしながら開発を進める手法です。あらかじめ定めたリリース日に開発が終わることを目指し、プロジェクトを進めます。
この場合、何を作るかさえ明確に決まってしまえば、それを工程やタスクに分解し、確実に作っていけるようにプロジェクトをマネジメントし、確実に作り上げることが可能です。
環境変化が少ない領域(例えば、規制が強く比較的競合が少ない金融や保険などのように、短期間に変化しづらく、大規模な投資が必要となる領域)では、作るものと期日が明確であればウォーターフォール開発が向いてます。
一方、アジャイル開発は、市場に出してみないと分からない、ユーザーに使ってもらわないと分からない、といった市場の不確実性が高いWebサービスを中心とした製品開発に向く手法です。
Webサービスのように顧客の要望や市場の変化が激しく不確実性の高い領域では、関係者で決めた仕様通りの製品を作っても市場に出してみたら全く売れないことがよくあります。市場から良い反応が得られる製品を作ることが重要ですが、市場の反応は事前に要件定義はできません。そのため、素早く小さく一通り動作する形でリリースし、市場の反応を見ながら改善や方向転換を繰り返す、スピード感と柔軟性が重要になります。
ここで重要なのは「誤りは必ずあることを認める」ということです。変化には必ず失敗があり、試していく過程で初めて成功するものにめぐりあえます。効率的にしようとするあまり失敗を許容せず、戦略性や計画を重視すると、かえって効率の悪化を招きます。自主性を持って数多く実験し、失敗したものは捨て、成功したものだけを残す。それを許容できる組織を創っていく必要があります。
筆者自身、8年前にITエンジニアの転職などを支援するWebサービス「paiza」を立ち上げ、2021年には登録者が40万人を超えるまでに成長させました。しかし、paiza立ち上げ前にはいくつかの事業はうまくいかず、方向転換をしてpaizaにたどりつきました。
考案した事業が実は顧客のニーズを満たしていなかった、もしくはそもそも顧客がいなかった、ということはスタートアップにとって日常茶飯事です。特に市場の変化が激しく、不確実性が増す時代には、商品やサービスを開発するための組織そのものを時代に合わせて変えていくことが必要です。
アジャイル型組織を成功させるために求められる5つの要素
組織の管理体制に関しても、ノートンカンパニーのようなトップダウンの中央集権型ではなく、3Mのようなボトムアップ分散型のチームが必要です。チームが市場から学び、素早く対応する、自己組織化したアジャイル型の組織体制は今日のグーグルやTwitterといった企業では当たり前の組織体制になってきています。
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