AV機器メーカーが電気圧力鍋を開発、大ヒットの秘密は「なんでもできる」の廃止:家電メーカー進化論(2/7 ページ)
テレビメーカーであるピクセラの子会社・A-Stageが、ライフスタイルブランド「Re・De(リデ)」を立ち上げ初の製品となる電気圧力鍋を発売。2年間の販売目標を8カ月で達成する大ヒットとなった。ピクセラはなぜ、畑違いの調理家電をヒットさせられたのか。A-Stage社長とピクセラ副社長を兼任する藤岡毅氏に聞いた。
テレビなどのデジタル機器メーカーが生活家電を開発する理由
――ピクセラといえば4Kテレビやテレビチューナー、IoT製品や通信機器などに加え、ソフトウェア開発も行っている会社というイメージがありますが、そもそもなぜ生活家電分野の開発に乗り出したのでしょうか。
ピクセラというのは今年で創業39年の歴史ある会社で、実は日本でも屈指の技術力を持っています。ただしこの技術力は、大手企業の裏側で開発を行うことが多いため、名前が表に出ない仕事が多く、ユーザーへの認知は低いのが現状です。もちろん、一部の液晶テレビやテレビチューナーなど、ピクセラの名前を出して販売している製品はありますが、我々の技術力がユーザーや消費者に対して認知が低い点は、課題でもありました。
この開発力を生かしながら、ユーザーへの認知も広げられないかと社内でさまざまな検討をした結果、ユーザーとの距離感や今後の市場性という観点から、生活家電分野に製品カテゴリーを広げようという結論に達しました。我々はもともとAV機器などの黒物家電に強いのですが、白物、つまり生活家電がより生活に密接に関わる点、白物という製品ジャンルを新規に獲得することでプロダクトポートフォリオを拡大できる点が決め手になりました。
――それで、18年に一人暮らし向けの家電のメーカー・A-Stage(買収当時はエスキュービズム)を買収したのですね。
ピクセラ自体はソフトウェア寄りの技術力が高い会社で、A-Stage(旧エスキュービズム)は家電というハードウェアの企画開発を強みとする会社です。A-Stageは買収前からデザイン性の高い“ジェネリック家電”、つまりリーズナブルでシンプルな機能の家電を販売していました。その家電に我々の技術を載せることで、デザイン性が高く、かつ付加価値のある製品を作れるのではないかと考えたのです。
買収段階では、両社のどの技術をどう生かすかといった具体的な構想はありませんでしたが、今では時代の流れもありIoT家電が流行しています。我々は、前述のような名前を出さない裏側で、クラウドベースのIoTサービスなども開発しているため、ネットワークにつながる家電製品でも活用できると思います。事業戦略としても、そういった技術も生かすことで、より良いブランド作りができるはずです。
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