AV機器メーカーが電気圧力鍋を開発、大ヒットの秘密は「なんでもできる」の廃止:家電メーカー進化論(4/7 ページ)
テレビメーカーであるピクセラの子会社・A-Stageが、ライフスタイルブランド「Re・De(リデ)」を立ち上げ初の製品となる電気圧力鍋を発売。2年間の販売目標を8カ月で達成する大ヒットとなった。ピクセラはなぜ、畑違いの調理家電をヒットさせられたのか。A-Stage社長とピクセラ副社長を兼任する藤岡毅氏に聞いた。
――Re・Deブランド最初の製品に、なぜ電気圧力鍋が選ばれたのでしょうか。
開発がスタートした18年当時、電気圧力鍋は便利なのに世間ではそこまで広まっていない印象がありました。当社でマーケティング調査を行ったところ、購入されない理由としてデザイン面が挙げられており、それなら当社で、F1〜F2層(20〜49歳までの女性)に刺さるようなデザイン性に優れた電気圧力鍋を出せれば売れるのではないか、という仮説を立てたのが発端です。
――Re・Deブランドの家電へピクセラの開発力をアドオンするというお話でしたが、「Re・De Pot」はIoT化していませんね。
「Re・De Pot」のIoT化はもちろん考えたのですが、IoT化すると実際にはスマートフォンと連携ということになるでしょう。ですが、実際に電気圧力鍋を使用するシーンで、スマートフォンが必要になるなど、むしろ手間が増えることも多い。これではテクノロジーが前面に出過ぎていて、ユーザー層を狭めてしまう恐れがあります。
Re・De Potを家庭の定番家電として使ってもらうには、もっと良いやり方があるはずだと考え、新製品ではIoT化を見送りました。当然、今後はユーザーが意識しなくても使える方法でIoT化する可能性もありますし、IoT化は必要ないという結論になるかもしれません。いずれにせよ現在は、ユーザーに一番良い方法は何かを検討している段階です。
このようにIoT化は見送りましたが、Re・Deブランドである以上“ただの電気圧力鍋”を出すわけにはいきません。そこでこだわったのが、炊飯に最適化した圧力です。社内で検証した結果、炊飯に最適な圧力は1.8気圧という結論に達しました。Re・De Potは、最大1.8気圧で圧力をかけられるため、特有の炊飯の美味しさと時短を実現しています。浸水なしで最短25分あれば、美味しいご飯が炊ける仕様になっているのです。
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