AV機器メーカーが電気圧力鍋を開発、大ヒットの秘密は「なんでもできる」の廃止:家電メーカー進化論(7/7 ページ)
テレビメーカーであるピクセラの子会社・A-Stageが、ライフスタイルブランド「Re・De(リデ)」を立ち上げ初の製品となる電気圧力鍋を発売。2年間の販売目標を8カ月で達成する大ヒットとなった。ピクセラはなぜ、畑違いの調理家電をヒットさせられたのか。A-Stage社長とピクセラ副社長を兼任する藤岡毅氏に聞いた。
“肩肘張らないブランド”でユーザーの多様性を重視
――Re・Deブランドでの今後の展開について語れることはありますか?
5月に新製品を発表する予定ですので、楽しみにしていてください。発表前なので製品は公表できませんが、ここではキッチン系家電とだけお伝えしておきます(笑)。
――Re・De Potは、ネイビーやエンジ色などのカラーでつや消しの本体、金属製のハンドルなど、シンプルながら特徴的なデザインが印象的です。今後のRe・Deブランド製品も、同様のデザイン性に統一されるのでしょうか。
Re・De Potは「飽きがこない」と思ってもらえる形を目指してデザインしました。キレイやカッコイイというデザイン要素だけでなく、「使ってみたい」と人の行動を誘発させるデザインを目指しました。
ただ我々は、ユーザーをRe・Deブランドに縛り付けたいわけではありません。今後も含めたRe・Deの製品は、並べたときに統一感のあるデザインにはしていきますが、全てを同じ色、同じ質感でそろえることはユーザーの囲い込みになりかねませんし、ユーザーの多様性や自由度を下げることにもなってしまいます。
それぞれ家電製品の用途や目的が違う以上、製品によって最適な色や素材感、デザインがあるはずです。Re・Deはそういった意味で、多様性のある肩肘を張らないブランドにしたいと思っています。もちろんデザイン性にも力を入れているので、ユーザーが自然とRe・Deブランドでそろえてくれればそれは本当にうれしいし、目指したいところでもあるのですが(笑)。
この「多様性」ですが、実はRe・Deブランドは「ライフスタイル全体をプロデュースする」という大きな野望も持っています。「ライフスタイルブランド」と銘打っているように、生活にかかわるさまざまな製品を、それこそ多様性をもってプロデュースしたいと思っているのです。
ですから今後は、家電というジャンルにとらわれない進化を目指していきます。正直、今は開発会社が開発だけを行っていても難しい時代だと感じていることもあります。もちろんピクセラが出発点である我々が関わる以上、起点となるのは家電やエレクトロニクス技術ではありますが、それをベースとして非家電製品も取り入れていく予定です。
例えばRe・De Potなら、雰囲気に合うお皿やエプロンなど、電気圧力鍋の周辺にあるライフスタイル製品、といった具合です。そのため今後は、他社との協業も増やしながら、新しい分野で新ブランドを昇華させていければと考えています。
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