AV機器メーカーが電気圧力鍋を開発、大ヒットの秘密は「なんでもできる」の廃止:家電メーカー進化論(6/7 ページ)
テレビメーカーであるピクセラの子会社・A-Stageが、ライフスタイルブランド「Re・De(リデ)」を立ち上げ初の製品となる電気圧力鍋を発売。2年間の販売目標を8カ月で達成する大ヒットとなった。ピクセラはなぜ、畑違いの調理家電をヒットさせられたのか。A-Stage社長とピクセラ副社長を兼任する藤岡毅氏に聞いた。
――Re・De Potは最初から、炊飯という大きな訴求ポイントを軸にマーケティングされていたのですね。
ただ、Re・De Potの製品発表会を予定していた時期に、ちょうどコロナ禍となってしまいました。もともとは20年3月に報道陣を招待した製品発表会を開催し、ご飯を試食してもらう予定だったのですが、そういった人を集めるイベントはもちろん中止せざるを得ません。結局、発表会は延期。発売直前の5月にオンラインで製品発表会を開催しました。
その発表会を延期した2カ月間で、Re・De Potの戦略もかなり見直しました。コロナ禍では外食が制限されたり、お子さんの通園や通学が制限されたりしたことで、我々が想定したターゲット層の家事負担は確実に増えていました。
そこで、ご飯とおかずを1度に調理できる「炊き込みご飯」の調理も訴求しようと考え、料理研究家の川上ミホさんと協力して「おかずにもなる炊き込みご飯」という時短レシピを提唱するようにしました。「毎日特別ごはん」というコンセプトのもと、「時短できる炊き込みご飯を作ろう」というコミュニケーションに反応があったのがSNSです。Re・Deブランドの公式インスタグラムは開始から1年経っていませんが、フォロワー数は3万人を超えるまでになっています。
Re・Deブランドは、口コミがSNSで広がる勢いなどを見ても、本当にピクセラとは違うと感じています。繰り返しになってしまいますが、ピクセラは技術力を中核とする開発会社なので、どうしても機能を優先しがちです。これを電気圧力鍋に当てはめると、「あれもできる、これもできる」という訴求になってしまいます。
一方Re・Deブランドは、商品(モノ)の体験(コト)という価値にベースを置いているので、今回の「炊き込みご飯で時短ができる」というように、ライフスタイルの提案までを含めて行いたいと考えています。つまり、Re・Deブランドのもつ機能以外の価値が、ターゲットユーザーの興味や志向と合致した結果、SNSで拡散されたのだと思っています。
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