「ahamo」のドコモ、経営統合のヤフーとLINE──“人口減少先進国・日本”で、勝機はあるのか:本田雅一の時事想々(1/3 ページ)
ヤフーとLINEが事業統合を進めている。その背景には“人口減少先進国”という、日本の負の側面を、近い将来、プラスに持っていきたい意図が見える。
ケータイ料金戦争の先にあるのは“土管屋”への未来か?
NTTドコモの「ahamo」を皮切りに始まったケータイ料金の値下げ競争は、格安SIMといわれたMVNOのサービスにも大きな変革をもたらし、いよいよこの春から本格的な競争が始まる。
ケータイ料金の新たな競争は、見方を変えるとアンバンドル(ばら売り)の競争だ。ありとあらゆるサービスや保険がパッケージ化された旅行ではなく、必要な要素だけを個別に最安値で組み合わせて旅行するようなもので、本当に必要な部分(この場合はデータ通信容量だろうか)に予算を割り当て、それ以外を可能な限り削ぎ落とし、シンプルにする。
データ通信なんてものは、一定水準以上の質があるならば安い方がいいに決まっている。今や覚えている人も少ないだろうが、スマートフォンがはやり始めた頃は、携帯電話会社なんて“土管屋”(設備のみの商売で付加価値のあるサービスを提供する余地がないこと)に成り下がるといわれてきた。
今どきのことだから使えるエリアが明らかに狭いとか、遅くて使い物にならないなんてことなら話は別だが、ある程度の水準を越えたら「超速い」よりも安い方がいい、という消費者が大多数に違いない。
これまでは大手キャリアの持つ安心感や手厚いサポート(どんなサポート? というのはあるけれど)を望む声も小さくはなかったかもしれない。しかし携帯電話が、固定電話、あるいは水道、ガス、電気などの公共サービスに近い存在になって来れば、状況は変わってくる。
ならば可能な限りシンプルに、データ通信の部分だけを提供してほしいというニーズが生まれるのは当たり前で、「あっ、その部分いらない」と言い始める人が出てくるのも当然の流れだ。
そんなアンバンドル競争を最初に仕掛けたのは楽天だった記憶があるが、菅政権の意向をくんで、アンバンドルなサービスの提供手法を洗練させ、一歩踏み出した形で発表したのが、保守的なイメージのドコモだったのは面白い。
このままでは“土管屋”へと近づいていく。ならば、さっさとスマホを中心にデータ通信容量で売り上げを高める手法に見切りをつけ、「おや、ドコモもなかなかやるじゃん?」と世間に思わせておく方が得策と考えたのだろうか。
──と、そこまであざとくはないとしても、5Gの時代にスマホを成長軸に置いていないことは間違いない。スマホ頼りの成長が5G世代でも続くことはないと考えられるからだ。サービス開始当初は、ある程度はスマホの5G対応も普及に貢献するかもしれない。しかし、成長の軸にはなるというシナリオはないだろう。
人口減少先進国・ガラパゴスだからこそ
そもそも、これから人口が大きく減っていくといわれる中、もはや契約者数は高止まりだ。今後は人口動向に応じて契約回線数は減っていくと考えられる。ドコモとしても今後、人口減少が見込まれる中では、より一人一人に寄り添った、細やかなサービスメニューが必要と感じたのかもしれない。
事業統合を進めるヤフーとLINEの船出も、そんな“人口減少先進国”という負の側面を、近い将来にプラスに持っていきたい意図が見える。
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