「ahamo」のドコモ、経営統合のヤフーとLINE──“人口減少先進国・日本”で、勝機はあるのか:本田雅一の時事想々(2/3 ページ)
ヤフーとLINEが事業統合を進めている。その背景には“人口減少先進国”という、日本の負の側面を、近い将来、プラスに持っていきたい意図が見える。
日本という国はガラパゴスに例えられるが、ガラパゴスの海は極めて豊かな海でもある。そこで多様な海洋生物が生き続けられる環境があるからこそ、ガラパゴスの海は多様で魅力的だ。平均所得の減少が続いているとはいえ、それでもなお日本市場という海は豊かで、その市場でもまれた商品、サービス、技術はグローバルで普遍的な価値を放つ。
古い話で恐縮だが、かつて日本の自動車メーカーが厳しい排ガス規制でエンジンの性能を落とし、製品としての魅力、競争力を大きく落とす中で、厳しい排ガス規制に対応すべく投資し、克服したことで国際競争力を高める源泉にもなったという話がある。
やや飛躍にすぎるかもしれないが、人口減少先進国という日本の現場に対応した細やかなサービスは、現時点では日本でしか通用しないかもしれない。しかしネットのサービス、技術はグローバルに通用する。
いずれ、多くの国が日本と同じ問題に直面するからだ。
“しょせんは狭い日本のAI”とは言い切れない
ヤフーがLINEとの経営統合を決断した一因には、ヤフーユーザーの高齢化があるといわれてきた。確かに「ヤフーってパソコン世代のブランドじゃない?」という言及には説得力があるが、かといってLINEが若い世代のメディア、ブランドかといえば、そこには異論もある。
ただ、日本国内だけでいえば、Yahoo! JAPAN、PayPay(LINE Payも将来は統合)、LINEと、3つの領域にまたがるメガブランドが並び立つ。EC市場での存在感が薄いという課題はあるとはいえ、日本の消費者をまるっと抱えるネットワーク社会の写し鏡のようなユーザーポートフォリオといえる。日本での総ユーザー数は3億超に達する。
国内での存在感では、他に比肩するものが思い付かないが、一方で彼らが勝負するAI領域ではグローバルに多くのライバルがいる。AI領域でデータが集めやすい英語圏の企業、あるいはプライバシー規制が緩い中国企業がライバルになってくる。
従来の基幹事業に加え、EC事業、飲食や旅行などのローカルサービス、フィンテック、行政のデジタル化、防災・ヘルスケアなど社会領域に投資をするという。とはいえ「狭い日本語圏(≒日本のみ)に最適化されたサービスなんて、誰も買わないし、使わないよ」という予測は、このところ20年ぐらいの歴史が示している。
しかし「しょせんは狭い日本市場に閉じたAI技術でしょ?」とばかりはいえない側面もある。なぜなら日本は遅れているからだ。遅れているからこそ“現在”の視点と技術から国全体をデジタルトランスフォーメーション(DX)できる。
“問題解決提案国”としてのロールモデルに
筆者が注目しているのは、ヤフーとLINEが経営統合を進める中、並行して政府が5Gネットワークを活用するための規制改革を進めていることだ。
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