ミスマッチ・早期離職はなぜ起きる? “入社後に活躍する”中途社員を見極めるための心得:これからの採用戦略を考える(2)(1/2 ページ)
中途採用のミスマッチや早期離職を防ぐため、採用目的はどのように見直すべきか。書類選考や、面接、受け入れ時の注意点とは?
「採用目的」と「期待する成果」の明確化が、ミスマッチを防止
企業が明確な採用目的を持ち、候補者に正しく伝えられていること──これが、中途採用のミスマッチを防ぐために最も重要なポイントである。
入社する前から、企業の課題や入社後に達成して欲しいこと、期待する成果の共通認識が持てていると、入社後のミスマッチは起こりにくい。営業やマーケティングなど、担当する領域や数値目標を具体的に提示しやすい職種では、他の職種と比べて意識のすり合わせを行いやすい。担当領域と目標が明確だと、入社直後から働きやすく、成果も出しやくなるため、入社後の活躍につながりやすい。
一方、採用後にミスマッチを起こしてしまう原因としてよく見られるのが、採用目的が人数合わせ(=ヘッドカウントの調整)になってしまっている場合だ。「この辺を担当してほしい」という漠然としたニーズでの採用も該当する。これは、企業の課題の明確化や、戦略の具体化ができていない時に起きている。
しかし、企業は自社がこの問題に陥っていることに気付いていないことが多い。転職者は入社をしても何をすれば良いのか、何を達成すれば会社に貢献でき、自分が評価されるのかというゴールが分からない。そのため、実力があっても思うようなパフォーマンスが出せず、あるいは単純に「思っていたのと違った」という理由で、早期離職にもつながる。
スタートアップ企業やベンチャー企業などで今後の計画が流動的で、何が起きるか予測しづらい環境にある場合、採用の要件を「会社やサービスを成長させるために何でもやってくれる人」と定義し、募集のプロセスではっきと伝えられていれば問題ない。企業の要求を正しく伝えた上での応募は、採用の目的に合意が取れているといえるからだ。そして、「事業の拡大」という目標に向けて、入社者は自分がどのように貢献できるかを考え、自発的に動ける。問題は、企業と候補者の目線が合っていないときに起きる。
ミスマッチを防ぐための2つ目のポイントが、企業内での経営者・人事・現場の三者間での採用目的の認識合わせだ。立場の違いによる認識のずれは、採用活動や入社後の定着の成否を分けるリスクをはらんでいる。
選考で見るべきポイントと、書類選考の落し穴
採用目的に合うかどうかをベースとして、選考時にはどのようなポイントを見るべきだろうか。
ジョブ型雇用(専門職採用)において選考時に確認すべきポイントは、専門領域でどのような結果を残してきたのか、それが達成されたのはどのような環境下だったのか、その人の役割は明確だったか、残した結果に対してどのような評価を受けてきたか、などである。実力の確認とともに、成果を出すことへの再現性があるか、自社の置かれている環境下で結果が出せるかの判断につながる。
応募書類を読んで引っ掛かる部分があれば、曖昧なまま合否を判断せず、5分程度の短い時間電話などで話をしてみることを提案したい。自分の経験や強みを書類に落とし込むことが苦手な候補者は、非常に多い。転職エージェントでは企業の採用ニーズに合わせて添削を行っていることもあるが、候補者が書いたものがそのまま企業に提出されることの方が多い。その場合、書類の書き方が悪いだけで本質を見誤り、企業に必要な人材を逃してしまうことがある。
以前、能力もスキルも申し分ない応募者が、書類選考で不合格となった。筆者は転職エージェントとしてその人の能力や人柄を買っていたため、企業に交渉して会ってもらった結果、採用に至ったというケースがある。この事例ではフォローができたが、応募方法やタイミングによってはリカバリーができないこともある。
この様な機会損失を防ぐために、書類選考の方法は変化していっても良いのではないだろうか。
例えばジョブ型雇用であれば、企業が求めており、具体的に提示してほしい情報を、事前に候補者やエージェントに開示して提供してもらうなどだ。企業ごとに見ているポイントは異なるため、候補者それぞれが自由に書く内容より、明確な判断がしやすくなるだろう。
また、メンバーシップ型雇用においてはその会社で働くことへの熱意が問われるため、なぜその仕事がやりたいのか、自己推薦文を書いてもらうのも良いだろう。これだけの情報があって初めて、書類が人材を判断できる材料になると考える。今後、このような改革が起こっていくことを期待している。
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