等級を廃止、70歳に定年延長 USEN-NEXT HDが推進「年齢に関係なく働ける」仕組み:報酬の決め方は?(2/3 ページ)
USEN-NEXT HOLDINGSが、定年を70歳に延長する新制度を導入した。同時に人事・賃金制度も、年功的な要素を完全になくした新制度に改めた。その仕組みは?
「そういう意見も出ましたが、これは明確に誤りです。ヘッドカウントと総額人件費で全体の人員計画と予算を適切にコントロールしてさえいれば、定年が延長になるとかなくなるからといって人件費が増えることには、当然ながらならないわけです」
とはいえ、年功的な人事・賃金制度を取っている企業の場合は、定年延長や定年を廃止するとどうしても人件費が膨らみやすい面がある。だが、同社の場合は、定年延長制度導入と同時に、人事・賃金制度も、年功的な要素を完全になくした新制度に改定した。
ここで簡単に同社の人事・賃金制度について紹介しておくと、従来は一般的な職能等級制度であったが、等級を廃止し、Job Title・Job Nameと呼ぶ役職・役名のみを残した。また、給与は「人材価値」を毎年評価して報酬額(年俸)が決まる年俸制に変えている。
人材価値とは、その人がどの程度成果を出して貢献しているかという現在価値を測るものだ。具体的には「成果」「組織貢献度」「能力」「成長期待」「Challenge and Innovation」の5項目で評価され、それに基づいて年俸額が決まるという仕組みである。
「これは、言い換えると、市場価値によって給与が決まる制度です。日本では多くの会社は市場価値と現在価値が一致しておらず、市場価値のほうが高いと、その人は転職してしまう可能性も高まるわけですが、当社の場合は現在価値と市場価値をきちんとバランスさせたといえます」
具体的な評価の仕組みは、通常のMBO(目標管理)と大きな違いはない。ただし、明確な数値指標のない職務に関しては、成果などの測定が難しいこともあり、目標達成度よりも、むしろ上司が日常的なマネジメントを通じてメンバー一人一人の成長度などをみることを重視しているのが1つの特徴である。従って1on1などを含めた上司と部下のコミュニケーションも活発に行われている。
定年は60歳と70歳の2回 60歳時に一人一人再査定して給与を決定
同社の70歳定年の制度では、定年が2回あるのが最大の特色だ。正社員はまず60歳で一度目の定年を迎えるが、本人が希望すれば正社員として再び雇用され、二度目の定年である70歳まで継続して勤務することができる(図表1)。
「一度60歳で定年を設けたのは、自身のキャリアをしっかり考えるポイントにしてもらおうという狙いがあります。これは60歳以上に限りませんが、働く人は自分自身のキャリアについて自分で考えて自律的に選ぶべきだと思うし、会社もその機会を与えるべきです。そのほうが会社にとっても個人にとってもハッピーだからです。
逆に、例えば自分のキャリアについて何も考えずに何となく過ごしているだけでは、その人は気が付くと会社にぶら下がっているようなことになるし、会社の側もきつい言い方をすれば余分なコストを払っていると感じてしまうことにもなりかねず、それはお互いにとって大変不幸なわけです。それよりも、60歳の時点で、いまあなたはどうしますかと、自分のキャリアと行く末を真剣に考えてもらったほうがいいとの思いから、こうした制度を作った次第です」
実際は60歳になる3〜6カ月程度前に人事もしくは各部門で対象社員と面談を実施。今後のキャリアなどについて話し合いながら、再雇用の意向も確認している。
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