企業も社長も「長寿」な日本 見て見ぬフリでは済まない「事業承継」のポイントとは?:「普通」の受け皿をなくさないために(4/4 ページ)
中小企業が多いことで知られる日本だが、実は「長寿」企業も多い。社長の高齢化も進む中、事業承継が大きな課題となりつつあるが、ポイントはどこにあるのか。
(1)後継者が、過去の経験に基づく手法を否定してしまうケース
後継者は、現在見えている課題が目にとまり、新しい手法を取り入れたくなりがちです。しかしその手法は、過去の成功経験や失敗経験の積み重ねでできている場合もあり、安易に新たな手法を取り入れようとすると、社員は過去の頑張りを否定された感情を抱き、反発などが起こる場合があります。明らかに非効率な手法をとっていたとしても、その経緯や背景をしっかりと確認して行うのがスムーズな変革に向けたポイントです。
(2)後継者が、他社の成功体験をそのまま持ち込んでしまうケース
多くの後継者は、いいものを積極的に取り入れたいと考えます。他社で行っているよい手法や成功体験をそのまま持ち込んで実施しようとして、社員から「うちの会社には馴染まない」と反発が起こる場合があります。環境や背景を尊重しつつ、自社に合った手法を検討していくプロセスを端折らないことがポイントです。
(3)社員が、思考停止してしまっているケース
課題が顕在化しているにもかかわらず、長くやり方を変えていなかったことで、社員が変化に対して思考停止をしてしまっている場合があります。手法から変えていくのではなく、まず「なぜ変える必要があるのか」を社員にしっかりと伝えて理解させるプロセスを踏むことがポイントです。
長寿企業は「普通の人がいきいきと働ける場所」
長い歴史と文化が存在する長寿企業の事業承継は、守るべきものがある分、変化するための壁が存在します。特に組織づくりにおいては、難易度が高くなるのではないでしょうか。社内の協力者を増やすことが必要になりますが、協力者が少ない場合には、ノウハウを持っている外部プロフェッショナル人材の活用も一つの打ち手となります。
コロナ禍をきっかけに、これまで企業が抱えていた組織課題が一気に顕在化されてしまいました。そして、アフターコロナに向けて課題を解決する方向に舵を切る企業と、そうでない企業との格差も大きくなってしまったように感じます。
また、これまでは日本企業のベースであった終身雇用も見直されつつあり、雇用が守られない時代がすぐそこに来ています。筆者は、これからの未来は「普通の人が働ける企業」が少なくなっていき、求められる人材とそうでない人材の格差も大きくなっていくと考えています。失敗が許されない社会、とても生きにくい世の中が迫っています。
これまでの終身雇用をベースとした「日本的」な長寿企業は「普通の人がいきいきと働けるプラットフォーム」として役割を担ってきたのではないでしょうか。変化の激しい時代だからこそ、高い能力を求められなくとも、「普通の人が働ける」社会を作っていくべきだと思います。時代に対する変化に柔軟に対応し、安心して働ける長寿企業を、さらに元気にしていくべきではないでしょうか。
著者プロフィール・高橋 実(たかはし みのる)
組織・人事クリエイティブディレクター/マイクロ人事部長
株式会社モザイクワーク 取締役
株式会社ティーブリッジェズカンパニー 代表取締役
法政大学 兼任講師ほか、複数企業の人事責任者として従事。
慶應義塾大学卒業後、株式会社ジェーシービーでインターネット黎明期の新規事業立ち上げに従事、その後NTT、トヨタのクレジットカード事業立ち上げに参画。その後人事に転身し、トヨタファイナンス株式会社、創業100年企業、株式会社HDE(現HENNGE株式会社)で人事部長を歴任したのち、「人事の複業」として複数企業の人事責任者としてハンズオンで企業の組織改革を手掛けている。
新卒、中途、アルバイト採用変革、外国人採用、人事制度改革、女性人材活用、組織改革プランの企画・実行、HR Tech導入、労務実務改革、組織健康戦略、戦略総務(BCP/リスクマネジメント/オフィスファシリティマネジメント)など、企業の中に入ってハンズオンで行っている。セミナー登壇・メディア出演多数。
「高橋実@マイクロ人事部長」としてnoteでも情報発信を行っているほか、Twitter、Linkedinでも活動している
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