日本進出7年で売上200億突破のアンカー・ジャパン、“成功の裏側”と多ブランド戦略の意図:家電メーカー進化論(3/9 ページ)
Ankerグループは2011年創業。13年設立の日本法人は初年度売り上げ約9億円、18年には200億円超と急成長を遂げ、今やモバイルバッテリーの代名詞ブランドとなった。また家電、オーディオデバイス、モバイルプロジェクターなど、次々と新ブランドを展開。急成長の秘密と多ブランド展開の戦略と展望を、猿渡歩COOに聞いた。
――とはいえ、どの企業も4Pに関しては力を入れているはずです。その中でアンカー・ジャパンはなぜ突出した結果を出せたのでしょう
先ほど「当たり前のことを当たり前にすれば売れる」といいましたが、口でいうのは簡単ですが、正直ほとんどの企業が簡単にはできないと感じています。その理由の一つが意思決定のスピードです。
我々は当初、主な販売の場としてECを利用しましたが、ここはとにかく業界のスピードが早い。例えば、量販店だと棚割り(どの製品をどこへいくつ置くかといった陳列計画のこと)を1週間に1回も変えない場合もありますが、ECでは製品の売り上げランキングが1時間ごとに変わります。その変化に対し、きちんとリアルタイムで意思決定を行えるかどうかが重要だということです。このようなスピード感は、大企業には現実的に難しいところが多いだろうと想像します。
またAnkerグループでは、製品の開発・品質管理の担当者のほか、マーケティングやセールス、カスタマーサポートなど、製品に関わる上流から下流までのメンバー全員がAmazon.co.jpなどの製品レビューを含めたVOC(Voice of Customer)に目を通しています。さらにアンカー・ジャパンでは、事業部門のチームミーティングを週に1度開催しており、その最後にカスタマーサポートと一緒にレビュー件数の傾向やトレンドなどから、製品の動向をチェックする仕組みもできています。
この仕組みによって、星の付き方で売り上げを予測したり、初期不良の有無などをチェックできるため、特に新製品では重要になってきます。このように複数の部門が連携を取りながら、顧客の声との距離を近く保つ工夫も、大企業にはあまりないように感じています。
顧客の声の中でも、他国にはない日本特有のものと感じている点は、製品そのものの品質等にはあまり関わらない、箱が潰れているとか説明書に誤字があるといった部分なども、しっかり教えていただけることですね。
日本の場合、全てに不備がないのが当たり前です。それもあって、ネガティブなことがあったときだけレビューを書くという人も多い。とはいえ、日本でみなさんに認めていただくには、日本の顧客が満足するレベルでサービスを提供するしかありません。その意味でも顧客のレビューは、非常に役に立っています。個人的には、日本の顧客を満足させられれば、世界のどの国の人も満足させられると思っています。
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