ファーウェイ成長急にブレーキ、日本事業のリスクは“キオクシア”<ファーウェイの現在地・中>:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/4 ページ)
通信機器大手のファーウェイは3月31日、2020年の決算を発表。売上高は前年比3.8%増の約15兆円、純利益は同3.2%増の約1兆円。米国による規制が続く中、増収増益を確保。ファーウェイ・ジャパンの王剣峰会長は、20年の日本企業からの調達額を公表せず、輸出規制強化が相当な影響を及ぼしていることを示唆した。
半導体輸出規制は日本市場にも影響
ファーウェイの高機能スマートフォンは、ディスプレイやカメラセンサーなどの部品のうち半分を日本メーカーから調達しており、本社コンシューマビジネス部門の余承東CEOも17年に、「(当社のスマホは)メイドインジャパンと言えるくらい、日本部品の搭載が多い」と発言した。
同社のスマホ出荷台数の増加に比例し、日本企業からの調達も右肩上がりとなり、14年に2220億円だった調達額は、ファーウェイが米国の輸出規制リストに掲載された19年には1兆600億円に増加した。
19年11月に来日したファーウェイ本社の梁華会長は、「日本の技術的な強みは、長期的に維持される。20年の調達額も拡大が確実」と述べたが、ファーウェイ・ジャパンの王会長は31日、「20年の調達額は公表しない」と金額を明らかにせず、20年の輸出規制強化が相当な影響を及ぼしていることを示唆した。
王会長によると、21年の不確定要素は「キオクシア」をめぐる動向だ。
ソニーとキオクシアは20年に米商務省から半導体の輸出許可を受けたものの、キオクシアの許可は今年1月に取り消された。キオクシアが許可を再度受けられない場合、21年の調達規模は20年を下回るリスクが大きいという。
王会長はまた、「半導体分野では影響が出ているが、日本国内の調達は電子部品の規模も大きく、こちらは堅調」とも語った。
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