“AI面接官”がインターン選考、評価上位10%はそのまま合格 ユニ・チャームが導入したワケ:狙いは(1/2 ページ)
ユニ・チャームは2018年ごろから、インターンシップ選考でオンラインの取り組みを強化した。さらに、面接官の好み(人的バイアス)ではなく、本人の能力だけにフォーカスしようと“AI選考”も導入した。その狙いは。
学生は何かと忙しい。就活生ともなれば、学業に就職活動が加わるため、もう一人、自分がいたら……と思うほどだろう。
そんな就活生たちに対し、学業にも精を出してほしい──と、ユニ・チャームは2018年ごろから、インターンシップ選考でオンラインの取り組みを強化した。さらに、面接官の好み(人的バイアス)ではなく、本人の能力だけにフォーカスしようと“AI選考”も導入。22年新卒対象者に向け、21年冬のインターンシップ選考から始め、評価の高かった上位10%に対しては、面接官が面接を行うことなく自動的に合格とした。
AI選考というと、血の通っていない冷たいものというイメージや、採用担当者がラクをする印象が浮かぶ人もいるかもしれない。しかし学生にも、企業にもメリットがあるという。導入の背景・狙いを、ユニ・チャームの佐々木一真さん(グローバル人事総務本部 人事部 キャリア形成支援グループ)に話を聞いた。
地理的なハンディキャップを排除したかった
ユニ・チャームは、不織布・吸収体の加工・成形分野で高い技術を誇り、ウェルネスケア、ペットケア、フェミニンケア、ベビーケアといった事業を展開。グループ全体の従業員数は1万6000人以上(19年2月時点)という大企業だ。
新卒で入社を志す就活生も多く、会社の雰囲気を体験するためのインターンシップへの応募も数千件と少なくない。もちろん、応募者全員にインターンシップに参加してもらうわけにはいかないため、選考を行っている。ユニ・チャームでは、この選考過程でオンラインでのエントリーシート入力と、デジタル面接プラットフォーム「HireVue」(ハイアービュー、HRテックベンチャーのタレンタが提供)の活用を進めている。
HireVueでは、応募者がスマートフォンやPCを使い、Web上で面接用の自己PR動画を録画・保存し、面接を受ける。ライブ形式の場合は、応募者と採用担当者が同じ時間にアクセスする必要があるが、録画形式であれば応募者も採用担当者も、時間と場所に縛られず面接を受けたり、評価したりできる。
なぜ、HireVueを導入したのだろうか。佐々木さんは「学生の本業は学業なので、できるだけ(応募や面接を)学業の妨げにしたくなかった」と話す。「学生は、応募したい企業と同じ地域に住んでいるわけではない。とはいえ移動時間や交通費など、地理的なハンディキャップを気にしてほしくない。録画形式の面接を導入することで、どこにいても選考に参加できるようにした」
遠いところから移動する必要がなければ、時間もコストもかからない。就活のために勉強の時間を減らす、といった必要がなくなり、学生最後の年であっても学生らしく過ごせる──というわけだ。
選考過程から人的バイアスを排除したかった
ユニ・チャームは、21年冬のインターンシップ選考で、HireVueで録画した動画を基に、AIが選考を行う「HireVue AIアセスメント」も取り入れた。インターンシップ応募者の合格までの流れは次のようになっている。
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