こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。
「実質的失業者」問題
日本人労働者の賃金が先進国の中で際立って低いことは、さまざまな客観的なデータが示す事実であり、最近ではいよいよ韓国にまで抜かれてしまったと話題になった。
しかも、責任感からタダで働く、いわゆるサービス残業がまん延しているようにハードな働きぶりで知られている。有給取得率も低いし、精神的にもかなり追い込まれる。NHKも参加している国際比較調査グループ(ISSP)によれば、日本のパワハラ比率は25.3%と世界37カ国中第4位であり、主要先進国の中で際立って高い。
ちなみに、このような日本のブラック企業化は、外国人犯罪も増やしていく。
「低賃金重労働」がデフォルトなので当然、若者は少しでも条件がいい企業にわっと押し寄せて、重労働のわりに賃金が低い業者には誰も寄り付かなくなる。そこで言葉巧みに中国やベトナムから安価でこき使える、いわゆる「外国人労働者」を大量に迎え入れたわけだが、それらの国でも経済成長著しく賃金が急速に上がっている。そうなれば当然、「なんで安い給料でこんなにコキ使われるのだ」と不満が募るので、職場から逃げ出して不法滞在状態になる外国人も増えていく。その中には、犯罪に流れる者も出てくる。
21年2月、群馬県警が20年中に摘発した在日外国人(永住者、特別永住者などを除く)が433人と過去10年で2番目に多く、このうちベトナム人が212人と国籍別で最多になったというニュースがあったが、こういう話が全国で雪だるま式に増えていくのだ。
「確かに、日本の低賃金や長時間労働は問題だが、だからといって、それをブラック企業と重ねるなんて話が飛躍しすぎる」というご意見もあろうが、ほかにも共通点は山ほどあるのだ。
例えば、ブラック企業のブラックたるゆえんの一つに、バイトや派遣労働者という雇用が不安定な人たちの弱さにつけ込んで、徹底的に使い倒すという卑劣な手法があることが知られているが、実はこれは日本経済の根幹をなすシステムでもある。
それを象徴するのが、「実質的失業者」だ。
これは野村総合研究所が、パート・アルバイトのうち、「シフトが5割以上減少」かつ「休業手当を受け取っていない」人たちのことを定義したもので、統計的な「失業者」「休業者」は含まれない。
分かりやすく言えば、雇い主から「ごめんね、コロナで厳しいから今月はシフト半分で」なんてことを言われながらも本来もらえるはずの休業手当ももらえず、給料半額でしのいでいるパートやアルバイトの方たちのことだ。
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