こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。
労働搾取の構図
そんな気の毒の人たちがいるなんて、と驚く正社員の方たちも多いかもしれないが今、飲食店、ホテルなどサービス業の現場にはこの「実質的失業者」が山ほどいる。野村総合研究所が2月に、全国20〜59歳のパート・アルバイト就業者6万4943人を対象に調査をした結果と、総務省の労働力調査を用いて推計したところ、21年2月時点で、全国の「実質的失業者」は、女性で103.1万人、男性で43.4万人にのぼったという。
では、なぜこのおよそ150万人もの方たちは、こんな常軌を逸したブラック労働に甘んじているのかというと、立場が弱いからだ。「シフトを減らすなら休業手当くださいよ」「それじゃ食ってけないから、ほかのバイトと掛け持ちします」などと不満を言って、雇い主の機嫌を損ねたら、もっとシフトが減らされてしまうかもしれないし最悪、クビになってしまうかもしれない。だから、どんなに理不尽なことを言われても、それに従うしかないのだ。
この労働搾取の構図は、ブラック企業で異常な働き方を命じられても、ただただ従うしかない派遣やバイトの方たちとまったく同じである。
このように弱い立場の人をこき使わなければ成立しない産業が残念ながら、日本の中にはたくさんある。良い悪いという話ではなく、これが偽らざる日本の姿なのだ。
もちろん、このように言われたところで「はい、そうですか」とすんなりと受け入れられない人がほとんどだろう。ブラック企業のような悪い連中はほんのひと握りであって、ほとんどの日本人は搾取だなんだとは無縁だ。そう思う方が圧倒的に多いはずだ。
ただ、日本のシステムがブラック企業のそれと同じだということの動かぬ証は、実はわれわれのすぐ身近にある。それは、「精神論」だ。
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