国内に75万室! 供給過剰のビジネスホテル インバウンド消失で生き残る策はあるのか:コロナ禍だけが原因じゃない(3/5 ページ)
ホテルが供給過剰? コロナ禍でインバウンド消失、国内需要も激減とあっては当然のことと思われるだろう。しかし筆者は、供給過剰というワードは、コロナ禍ではなく“コロナ禍前の状況”を表していると指摘する。
開業しやすいビジネスホテル
ホテルの増加傾向について具体的な数字を見ると、インバウンド活況が指摘された14年から18年の5年間で増加数は約600軒とされる(観光庁統計)。異業種からの参入も目立ったが、中でも増加著しいカテゴリーが宿泊特化型のホテル(ビジネスホテル)というのは考えれば当然だ。収益力が高く、開業へのハードルは低いからだ。客室以外の施設は少なく当の客室も判を押したような同じタイプを量産することも特徴的だ。異業種の参入障壁という点でもホテル事業をスタートするのには宿泊特化型は都合が良い。
概して客室面積が狭いビジネスホテルについては、軒数はもとより供給する室数も多くなる。HotelBank(メトロエンジンリサーチ)が発表した日本全国ホテル展開状況(20年1月現在)によると、カテゴリー別ではビジネスホテル75万3961室(8416施設)、シティホテル19万1549室(1179施設)、リゾートホテル12万259室(1576施設)、旅館24万3853室(1万4050施設)となっている。
実際に多くのビジネスホテルから、余剰の懸念を聞かれるようになったのが18年の終わり頃と記憶している。メディア的にも世間的にもはまだまだホテル活況が叫ばれており、強気の料金設定も多く見られた。ところが、19年に入ると状況はガラッと変わり、人気観光都市や大都市部のホテルで稼働率や料金の下落傾向が見られるようになったのである。
シンクタンクなどからもホテル供給過剰を懸念するデータが出されるようになるのもこの頃だ。事業用不動産サービス会社CBRE調べによると、主要9都市(東京、大阪、京都、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡、那覇)で19年から21年に増加する客室数は約7万8000室というデータも出された。これは18年末のストック数の24%にも相当する。このように、実はコロナ禍以前から業界ではホテル、特にビジネスホテルの供給過剰が懸念されていたのである。
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