さらばミャンマー、日本企業はどうする?:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
ミャンマーでクーデターが起きてから、早くも2カ月半になる。ミャンマー日本商工会議所に加入している400社を超えているが、現地の日本企業はどのように対応すればいいのだろうか。
ミャンマー市場と距離を
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、国軍を支援する事業や外国企業に、事業などへの関与を「見直すべきだ」と発言しているため、欧米諸国はこの流れには逆らえないかもしれない。
英監視団体の「ビルマリポート」は、国軍と関係している企業を名指しで公開しており、日本企業も数多く登場する。そこにはここまでに触れた、キリンや丸紅、さらに中小企業も批判の対象になっている。
もちろん、11年の民政移管の際に開かれた市場として、世界からの期待は大きく、これまで日本企業が進出してきたことは批判されるべきことではない。しかもミャンマー国内で大きな事業をするとなれば、国軍の存在は無視できないため、軍との関係が避けられない場合もあったはずだ。
だが、クーデターで状況は一変した。そして、クーデター前のような状況に戻る可能性は当面ないだろう。ミャンマーでビジネスを展開すれば、国際社会からの批判がついて回る。またこれから、米バンデン政権や欧州各国が、対中政策などで人権問題を取り上げる場合が増える。そうなれば、ミャンマー国内の人権問題も俎上(そじょう)にのせるだろう。
日本企業は、残念ながらミャンマー市場と距離を置いていくしかないだろう。国軍が引き起こしたクーデターによる混乱はあまりに大きいということだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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