限りなく近づいた自動運転の時代:池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/7 ページ)
トヨタは従来のADAS(高度運転支援システム)を一歩進めた先進運転支援システム「Advanced Drive(アドバンスト・ドライブ)」を、トヨタブランドの燃料電池車(FCV)のMIRAIと、レクサスブランドのハイブリッド(HV)LSに搭載車を設定した。
さて、MIRAIのAdvanced Driveは極めて快適である。ただし、新しいデバイスかつ、かなり複雑なことをやっているので、筆者の頭の中のケーススタディがなかなか追いつかない。
例えば出口インターで警告音が鳴り、ドライバーに運転操作を要求する。さすがにステアリングは受け取るし、ブレーキに関しては常時心の準備をしているので大丈夫なのだが、アクセル操作を忘れる。クルコンが動作を止めることをうっかりするのだ。出口なので元々減速するタイミングでもあるので、静観していると、どこまでも減速をして、後ろのクルマに迷惑をかけたことがあった。
システム全体として、加減速の調整がうまく、割り込まれる時の減速もまあ及第点でやってくれる。こればかりは相手の入り方にもよるので、一概にシステムの滑らかさだけで評価できない。ぶつかっては意味がないからだ。遅い車両の追い越しや、走行車線への復帰に際したオート車線変更の提案アルゴリズムもまあ頑張っているが、追い越しに時間が掛かりすぎないように、速度差でキャップをかけているので、人がやるほどには臨機応変ではない。
ちなみにAdvanced Driveのプリセット設定速度は時速60キロから120キロ、動作そのものは0キロ以上で、つまり渋滞時にも作動する。高精度地図を持っているので、高速道路や自動車専用道以外ではAdvanced Driveはセットできないが、通常領域のADASは地図連動ではなく、ドライバーが任意の場面で、全車速で設定できるのはこれまで通りである。
ということで、そもそもクルマの運転が嫌いでない人にとっては、そして機械の作動状況を頭に描きながら運転できる人にとっては、実質的に自動運転と受け止められるものに仕上がっている。何より欲しくなった。これまでのクルマと明確に違うくらい付加価値が積み上がっている。まあ自分の懐具合から見れば、及びも付かない高嶺(たかね)の花なのが残念なところなのだが。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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