物流業を苦しめる「ラストワンマイル問題」、米国ではどう解決? 4つの先進企業:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/3 ページ)
ラストワンマイル問題とは、配送の最終拠点から顧客の家までの区間(ラストワンマイル)に生じる、さまざまな問題を指すものだ。ラストワンマイル問題を解決する、米国の先進企業を紹介する。
ラストワンマイル問題とは、配送の最終拠点から顧客の家までの区間(ラストワンマイル)に生じるさまざまな問題を指すものです。ECサイトの拡大によって宅配サービスの取扱量が増大しているにもかかわらず、ラストワンマイルの配送を行う人手が圧倒的に足りず対応しきれない、また競争力強化のために各社が行う送料無料や再配送というサービスに配送料が釣り合っていないなどが代表的な問題です。
このラストワンマイル問題を解決する、米国の先進企業をご紹介します。
連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線
小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。
(1)ギグエコノミーサービス
2011年に設立されたポストメイツ(Postmates)は、サンフランシスコに本社を置き、米国の400都市で事業を展開しているラストワンマイルデリバリー業者です。現在、25万以上の加盟店がリアルタイムで配送を行っています。
顧客は同社のアプリを通じて都市内のあらゆる店舗やレストランから商品を購入し、地元の宅配業者から1時間以内という短時間でその商品の配送を受けられます。このサービスは24時間利用可能で、利用料金は都度払いか、月額7.99ドル(約860円、1年契約の場合)というから驚きです。
なぜこのようなオンデマンドな即時配達が可能なのかというと、ポストメイツの運営元が米国で圧倒的なシェア及び浸透率を誇る配車サービスのウーバー(Uber)だからです。
ポストメイツではウーバーと同様にGPSを利用した需要と供給のマッチングを行っています。配達員はスマートフォンで近くの顧客からの注文通知を受け取り、その顧客が希望する商品を購入して届けるため、無駄な移動時間がかかりません。
また、同社は20年、加盟店がアプリ上に設けたデジタルストアから顧客へのローカル配送を提供できる新機能を導入しました。この機能は、地元の小売業者のオンラインでの売り上げ増加を目的としています。
同社によると、このソリューションはオープンAPIを介して広くピックアップやデリバリーを提供することで、地元の小売店などの企業がイーベイ(eBay)やアマゾンなどの大企業に対抗する力を与えるとのことです。
(2)ドローン宅配
ドローンを使ったラストワンマイルソリューションも多く出てきています。中でも、11年に設立されたマッターネット(Matternet)は、カリフォルニア州に拠点を置き、ドローン技術を用いたラストワンマイル配達を行う企業として注目されています。
マッターネットがエンド・ツー・エンドで展開するサービスは、以下の3つの要素から成り立っています。
Matternet Cloud Platform(マッターネット・クラウド・プラットフォーム)
顧客からの依頼を受けルート決定・モニタリングを行い、全てのオペレーションを指揮・管理するための独自のソフトウェアプラットフォーム
Matternet Station(マッターネット・ステーション)
24時間いつでも荷物の送受信が可能な使いやすいインタフェース
M2 Drone(M2ドローン)
最大で2キロ・4リットルまでの荷物を半径20キロ以内に輸送できるドローン
このドローン技術は、配送業社に対して「現在の輸送手段と比較して、時間、コスト、エネルギーのいずれも大幅に削減する」「空を介したオンデマンドなドローン・ロジスティクス・ネットワークの構築及び運用を可能にする」といったソリューションを提供しており、現在はヘルスケア、eコマース、物流などの分野の企業に採用されています。
その中でも特に期待が寄せられているのが、ヘルスケアの分野です。なぜなら、ドローンを利用することで、配送のためのインフラ(道路や鉄道等)が十分に整っていないような地域でも、医薬品を迅速に届けられるからです。
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