物流業を苦しめる「ラストワンマイル問題」、米国ではどう解決? 4つの先進企業:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/3 ページ)
ラストワンマイル問題とは、配送の最終拠点から顧客の家までの区間(ラストワンマイル)に生じる、さまざまな問題を指すものだ。ラストワンマイル問題を解決する、米国の先進企業を紹介する。
(3)トラック共同配車
14年に設立されたローディ(Roadie)は、ジョージア州アトランタを拠点とする企業で、配達を希望する顧客と、その顧客がいる方面に向かっているドライバーを結び付ける、即時配達プラットフォームを展開しています。
このサービスは全米で展開されており、これまで、同社のプラットフォームを利用して米国内の2万以上の郵便番号の地域へ配達が行われています。
ドライバーは、ローディのプラットフォームを利用することで自分の旅行や移動のついでに配達を行って収入を得られます。都市間だけではなく、国を跨ぐ移動でも利用できます。
ローディの配送ソリューションは、以下の3つの規模で展開されています。
企業向けソリューション
自社の商品を即時配送できる地域を、米国の約90%もの家庭に拡張できる。同社は現在、自動車部品やタイヤ、食料品、ホームセンター、航空会社の手荷物、オムニチャネル・リテールなどの業界にこのサービスを提供している
小規模ビジネス向けソリューション
半径約160キロ以内の地域へ当日配送が行える。ホームデコレーション、自動車、美術品、Eコマース、重機、職人手づくりの食品などを専門とするビジネスが対象
個人向けソリューション
緊急性やサイズに関わらず、ある場所から別の場所へ商品を輸送したい個人が対象
(4)AI搭載型自動運転トラック
私が一番期待しているのが、AFN(Autonomous Freight Network、自律型貨物輸送ネットワーク)を開発し自動運転のトラックを物流業界で展開しているトゥーシンプル(TuSimple、図森未来)です。中国のスタートアップ企業で、21年4月に米ナスダック市場に上場し、注目を集めています。
AFNというのは、商業配送用のトラックが、デジタルマップ上のルートに沿って安全かつ確実に拠点間を自律走行することをサポートする技術です。既存の物流ネットワークや輸送管理システムを取り入れることで、米国内で幅広く展開されています。
以下はトゥーシンプルの、米国におけるAFNの展開図です。黄色い点(アリゾナ、テキサスの都市部)がフェーズ1、20〜21年にかけて展開予定の地域です。白い拠点(アトランタやフロリダの南部)が22〜23年に展開予定の地域、そして緑色の点(サンフランシスコ、シアトル、ボストン、ニューヨークなどの沿岸部)が23〜24年までに目指す地域となっています。
このように、広範囲にわたる長距離自律走行を可能にするAFNですが、それを支える高度なシステムは、AIやその他の先端技術によって成り立っています。
知覚技術の面では、トラックに搭載されたHDカメラ、LiDAR、レーダーなどにより、車両全体を360度検知できます。そのため、どんな走行状況でも車両を安全にナビゲートします。AIによる大量のデータのシミュレーションにより、夜間であってもこういった位置関係が把握できます。
また、それぞれのカメラは撮影範囲としてHDが1000メートル、LiDARが200メートル、レーダーが300メートルをカバーしているため、高速走行時でも30秒先まで見通すことが可能で、これによりシステムは瞬時に危険を回避できるといいます。
加えて、同システムは優れた情報処理能力を持ち、演算であれば1秒間に600兆回もの量を行えるそうです。これにより、人間よりはるかに早く状況を把握し、問題の検知と対処を行えます。
また、運転の基礎的な部分である「トラックが車線の中央を走行するのを維持する」「スロットルをコントロールする」「燃料効率を考えた走行を行う」といった操作を人間のドライバーよりも正確かつ効果的に実行します。
同社はこういった技術を展開することで、ドライバーによる移動中のスマホ操作や疲労による居眠りで起こる事故など、長距離輸送トラックに付いて回る問題を克服し、輸送における安全性と効率を向上させることが目的とのことです。
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