ヒルズアプリ誕生で生まれ変わった森ビル「ヒルズ」 DX化でどう進化?:顧客データを「ONE ID」でつなげる(3/3 ページ)
2021年4月5日、森ビル(東京都港区)が専用IDの発行とアプリを通し、数ある“ヒルズ”情報を顧客にスムーズに提供する「ヒルズネットワーク」という、新しい試みをスタートした。東京を代表するランドマークをいくつも手掛けてきた不動産デベロッパーが生み出した、デジタル×ヒルズの魅力とは何なのか。森ビルに直接、話を聞いた。
23年を見据えたデータ収集と活用
ヒルズネットワークは、ヒルズID・ヒルズアプリの提供開始をフェーズ1(21年)、利用データの活用・機能改修をフェーズ2(22年)、そして新規プロジェクトへの実装をフェーズ3(23年)とし、これから運用が進む。新規プロジェクトとは、23年の完成を目指す「虎ノ門・麻布台プロジェクト」「虎ノ門ヒルズエリア」のことだ。
フェーズ2では具体的にどのようなデータを、何に活用する予定なのか。そしてフェーズ3ではどんな機能を街に実装していくのか。山本氏に尋ねたところ、「まだ企画段階なので、具体的な詳細をお話しするのは難しいですが」と前置きしつつ、「属性に応じた情報の出し分け精度を上げていく他、購買の促進といった面でも各店舗と話し合い進めていきたいと考えています。これからは、アカデミーヒルズでイベントに参加した方が、その足で商業施設に向かっている・いない、といった情報も分析できるようになります。例えば、イベント参加者にはクーポンを配信して、商業施設を利用してもらう――といったことは、すぐにでもできるデータ活用方法だと考えています」と話す。
森ビルでは、オンデマンド型シャトルサービスや、IoTお忘れ物自動通知サービスなど、今までも積極的にデジタルを活用した実証実験を行ってきたが、その一部はすでにアプリに実装されている。「Digital Signage」とされた画面上では、現在地の天気、タクシーの待機台数と待機人数、最寄り駅の運行状況などを一覧で確認できるが、これは今まで試験的に街に設置していたセンサーなどから得たデータを用いており、「すごい小さい実証実験の積み上げによってできたメニュー」だという。今後は、店舗混雑状況の反映などにも拡大すべく、現在、実験に取り組んでいる。
「Digital Signage」画面は、ヒルズアプリの画面下部「メニュー」から「タクシーベイ/公共交通機関情報」をタップすると表示できる。21年4月26日現在、見られる情報は六本木ヒルズのみ(ヒルズアプリ画面より)
ヒルズネットワークでつなげる人と街
森ビルは今まで、職・住・遊・商・学・憩・文化・交流などを立体的、そして重層的に組み込むことで徒歩移動できるコンパクトシティーの開発を進めてきた。ヒルズという舞台に用意された住宅、ホテル、オフィスやレストランと、その上に行き交う人々。その間に挟まり「人と施設をつなぐ役割」を持ったデジタルプラットフォームとして、ヒルズネットワーク網が広がったことで、「今後はヒルズでの体験価値を今まで以上に高めていけるはずです」と、山本氏は自信をのぞかせる。
「われわれはデベロッパーなので、人々の営みこそが街の主題であると考えています。ヒルズネットワークは、あくまでヒルズをいかにシームレスに体験してもらうか、そのための補助なんです。目指したいのは、デジタルプラットフォームを中心に人の動きをデザインするのではなく、街を人に最適化させていくこと。それがお客さまにとって一つの魅力となり、また新しい営みが生まれて、“森ビルのまちづくり”の価値創造につながっていくと考えています」
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