急増する「焼肉の和民」が「牛角」の脅威に!? コロナ禍の“有望市場”を制するのはどこか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
ワタミが展開する「焼肉の和民」が好調だ。2020年10月に1号店をオープンしてから、3大都市圏で23店にまで拡大。同じ立地の「牛角」を脅かす存在になりつつある。
換気が良いイメージの焼き肉業態
焼き肉業態は換気が良いイメージがある。そのため、外食がコロナ禍で全体的に苦戦している現状においても、健闘している。日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によれば、2020年における外食全体の売り上げは前年比84.9%。1994年に調査を始めて以来、最大の落ち込みとなった。一方、焼き肉は89.1%で、テークアウト需要が多いファストフード96.3%、中華90.2%に次いで健闘していた。中華もギョーザ、唐揚げなどのテークアウトが好調だ。
焼き肉はテークアウト需要が旺盛とはいえないが、郊外ロードサイドでは焼き肉のテーブルバイキングが伸びている。例えば、「焼肉きんぐ」が大半を占める物語コーポレーションの焼き肉部門における20年7〜12月の既存店売上高は、前年同期比105.7%と成長している。「GO TO イート」の効果もあって、コロナ禍でも絶好調といっていいほどである。
焼肉きんぐと競合する焼肉チェーンに、ワン・ダイニングの「ワンカルビ」やジー・テイストの「肉匠坂井」などがあるが、いずれも好調と伝えられる。ジー・テイストは、21年7月には焼肉坂井ホールディングスと商号を変更する予定で、焼き肉を中心とする外食企業だと内外にアピールする。
一方、焼肉の和民では単品でも注文できるが、テーブルバイキングも採用している。焼肉きんぐ、ワンカルビ、肉匠坂井などとバッティングするロードサイドを避け、大都市近郊の駅前に立地を定めた。
そればかりでなく、焼肉和民では、回転寿司でおなじみの商品を席まで速達する「特急レーン」を導入。注文は席で、タッチパネルを使って行う。また、食べ終わったお皿を下げる際に、店員ばかりでなく、配膳ロボットが活躍する。従来の居酒屋業態に比べて、最大で接客による接触を80%削減しており、非接触性が高い。
排煙・空調に関しては、3分に1回、店内の空気の完全な入れ替えを行っている。
入店時には、自動検温カメラで顧客の体調をチェックし、アルコール消毒液を設置して顧客は手指を消毒してから着席する。従業員も勤務時の検温、手洗いとアルコールによる手指の消毒を義務化。就業中のマスク着用を徹底している。
このように、焼肉の和民はコロナ禍によって開発された業態だけに、感染症対策を十分に行ったうえで、外食の楽しみを提供しようといった姿勢を打ち出しているのが特徴だ。
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