ビットコイン本位制——ビットバンク廣末CEOが描く仮想通貨の未来(1/2 ページ)
ビットバンクの創業者である廣末紀之CEOは、証券からIT、そして初期からの仮想通貨(暗号資産)を見てきた。同氏は、現在の仮想通貨を巡る状況をどのように分析しているのか。
ビットバンクの創業者である廣末紀之CEOは、1991年に野村證券に入社し、その後99年からGMOインターネットで常務取締役を経て、2014年に仮想通貨取引所のビットバンクを創業したという経歴を持つ。また日本暗号資産ビジネス協会の会長も務める。
証券からIT、そして初期からの仮想通貨(暗号資産)を見てきた廣末氏は、現在の仮想通貨を巡る状況をどのように分析しているのか。
仮想通貨交換所は「ISP」である
——仮想通貨の価格が上昇しています。機関投資家や企業もビットコインに投資するなど、米国では世間の認知が変わってきました。そして、仮想通貨取引所のコインベースが、7兆円超という、三菱UFJを超える時価総額で上場したことが話題です。
廣末氏 野村證券に入社した後にIT業界に行き、IT業界の変遷を見てきた。今の仮想通貨取引所は、IT業界でいうISP(インターネットサービス・プロバイダー)だという話をよくしている。これは、その業界に入るゲートウェイの役割なので、とても重要だ。
米コインベースは、92年に上場したISPである米AOLに近い。AOLが上場してからインターネットの業界は活況になったが、その次には、より便利にインターネットを使えるブラウザが出てきた。仮想通貨業界はまだその段階にも行っていない。
では、ISPの勃興、ブラウザの登場のあと、何が起こったかというと、アマゾン、グーグルが出てきた。仮想通貨も広がったあとには、インターネットと同じように次のビジネスが出てくる。
取引所のビジネスは規制される業界なので差別化が難しく、最終的に手数料が差別化の方法になると、いずれもうからなくなる。グーグルやアマゾンになるために何をやるかが、これからのテーマだ。技術の進展、規制の進展、社会のアクセプタンス(受容)があって、新しいサービスが生まれてくるだろう。
高騰するNFT価格には懐疑的。IoTなどソフトウェア間決済に注目
——仮想通貨を使ったサービスとしては、20年にDeFiが流行し、21年に入ってNFTが急速な盛り上がりを見せています。
廣末氏 高騰するNFTの価格には懐疑的だ。NFTは以前からあるもので、今着目される理由はない。価格の正当化は困難で、バブルの要素が強い。技術的な優位性は感じない。マネーロンダリングのリスクがあるので、FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)でも、明記はしなくても明らかにスコープに入れている。ただし、NFTで所有者の一意性が保証されるなどのユースケースもあるだろう。
仮想通貨は人が使うように想定されているが、実は人が使うには使いにくい。一番のユースケースは、ソフトウェアが使うお金としてすごく優れている点にある。AIが発展して、自ら判断できるようになると、AI自体がお金のやりとりや経済活動をやるようになる。そのときに使われるお金はこれしかない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 仮想通貨バブルの崩壊を尻目に着々と進化を続けるブロックチェーン
仮想通貨価格は低迷するが、ブロックチェーン自体を活用した新サービスが広がろうとしている。ブロックチェーンとはいったいなんなのか。そしてブロックチェーンエンジニアに求められる資質とは? ブロックチェーン専門の無料イベントスペース「丸の内バカンス」のオープン記念イベントの講演から。 - イーサリアム2.0の足音 あなたが知らないブロックチェーン最前線
2020年8月4日、イーサリアム(Ethereum)の次世代版であるイーサリアム2.0の公開テストが始まった。イーサリアムは有力な暗号通貨であり、同時に有力なブロックチェーン技術のひとつだ。その技術の世代交代が始まろうとしている。 - なぜデジタル画像に何十億円もの値がつくのか? 熱狂するNFT市場
ゲーム内の土地がトークン化され数億円で売買されたり、デジタルアートが75億円もの値段で取引されたりと、全世界的にNFTと呼ばれるトークンが盛り上がっています。国内でNFTのマーケットプレイスを開始したコインチェックの天羽健介執行役員による、NFTに関する寄稿。 - ポルトガル2.5国分の電力を消費するビットコイン 仮想通貨の脱炭素化はなるか?
ビットコインが大量の電力を消費することはよく知られている。その量は1260億kWh以上。実にポルトガル2.5国分以上、アルゼンチン1国分に相当する電力だ。一方で、世界は今、脱炭素化、カーボンニュートラルに向けて急速に動いている。 - ビットコインはデジタル・ゴールドなのか? マネックス大槻氏に聞く
暗号資産(仮想通貨)の代表例であるビットコインは、しばしば「金」(ゴールド)と 比較される。金が埋蔵量に上限があるように、ビットコインはアルゴリズム的に採掘上限が定められている。さらに、価値を保証する発行体がないというのも、ビットコインと金の共通点だ。しかし、果たしてビットコインはデジタル版の「金」になり得るのか。マネックス証券のチーフアナリスト、大槻奈那氏に聞いた。