にわかに進む「週休3日制」議論が空虚な“改革ごっこ”に陥りそうだと思うワケ:スローガンには要注意(2/5 ページ)
「週休3日制」の議論が進んでいるが、筆者はスローガン先行の現状に警鐘を鳴らす。真の改革を伴わない“改革ごっこ”に要注意。
「同一労働同一賃金」については、2020年4月に改正法が施行されました。施行と同時に適用対象となったのは大企業です。そして1年後の21年4月、適用範囲が中小企業にまで広がりました。一見すると、これでいよいよ、日本でも欧州のような「同一労働同一賃金」が実現することになるかのようです。
しかし、そもそもの話、同一労働同一賃金法という法律は存在していません。日本で「同一労働同一賃金」の法律と呼ばれているのは、新たに制定されたパートタイム・有期雇用労働法や一部改正された労働者派遣法のことです。
また、厚生労働省の「同一労働同一賃金特集ページ」には以下のように記されています。
「同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです」
「同一労働同一賃金」という言葉の本来の意味は、読んで字のごとく、性別や雇用形態などを問わず同一の労働であれば同じ労働時間に対して同一の賃金を支払うことを指します。しかし今回の法改正で目指しているのは、「不合理な待遇差の解消」です。これは、「同一労働同一賃金」そのものではなく、その一歩手前といえる概念です。
「不合理な待遇差の解消」とは、待遇差があっても合理性を説明できれば良いということです。それを法制度で定めること自体は現状より一歩前進した取り組みだといえます。しかし、理由が説明できるならば、必ずしも現行制度を変える必要はないということでもあります。
賃金制度の成り立ちが異なるだけに、欧州のような「同一労働同一賃金」に移行するのはとても難易度の高い取り組みです。その点は、過去に「同一労働同一賃金がまだまだ日本で浸透しない、これだけの理由」という記事でも書かせていただいた通りです。「同一労働同一賃金」という言葉が使われているので、日本の賃金制度が劇的に変化するかのような印象を受けますが、実際はそうなっていないケースが大半なのは至極当然です。
また、そもそも欧州のようになることが正しいともいい切れません。法改正前に行われた有識者会議の様子などを見ても、「同一労働同一賃金」をどのように日本に導入していくべきかの議論が不十分なまま、見切り発車してしまった感が拭えません。
「同一労働同一賃金」と同じく、欧米に習おうとする取り組みとして目にすることが増えたのが、「ジョブ型」という言葉です。しかし、今ちまたで使われている「ジョブ型」という言葉の定義はバラバラの状態です。そのため、情報を伝える側も受け取る側も「ジョブ型」という言葉の意味をそれぞれに解釈してしまっている現状があります。
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