組織を悩ます「不祥事」と「社員の処分」 それでも“もみ消す”企業が多いワケ:正直者をつぶすな(1/4 ページ)
厚労省職員の飲み会問題が波紋を呼んでいる。郵便局でも、内部通報した職員に対する対応が問題となっているなど、企業の不祥事はなかなか絶えない。なぜ、真正面から向かい合わず、“もみ消す”方向の企業が多いのか。
不祥事に関するニュースを毎日のように目にします。政治家や企業、芸能人にスポーツ選手と、不祥事が話題になる人たちの属性や内容はさまざまです。
厚生労働省の職員23人が深夜まで送別会を開いていたことが問題視された一件は、テレビ、新聞、雑誌などあらゆるメディアで取り上げられました。2021年3月31日にNHKは、送別会に関わった当事者の処分について、「厚労省 職員送別会問題で処分発表 主催の課長は事実上の更迭 」と題して報じています。
報道内容を整理すると、処分内容は以下の通りです。
- 会合を主催した課長を減給1カ月とし他部署へ異動
- 課長補佐級を含む職員14人を訓告
- 5人を文書による注意、指導
- 地方自治体からの研修生3人は処分見送り
- 厚生労働大臣は大臣給与2カ月分を自主返納
- 事務次官を文書による厳重注意、局長を訓告
新型コロナウイルス感染拡大を食い止める役割の本丸でもある厚生労働省の官僚が、集団で深夜まで飲み会を開いてしまったのですから、糾弾されて処分を受けるのは当然です。その後、送別会参加者の中に新型コロナウイルス感染者が複数人いたことも判明しました。そもそもが決して起こしてはいけない事態だったことを考えると、事後に処分したところでむなしさが残ってしまいます。
一度目の緊急事態宣言発出からおよそ1年がたちますが、国民はずっとガマンし続け、今なお自粛し、ガマンしています。それだけに国民の怒りも大きいと思いますが、職場をともにする、不祥事には関わっていなかった他の厚生労働省官僚や職員の方々のやるせなさも相当なはずです。
民間企業でも同様ですが、一度組織が不祥事を起こしてしまうと、不祥事を起こしていない同僚たちまで世の中から同じような“目”で見られてしまいがちです。その目は、今後の仕事を確実にやりづらくします。今回の不祥事に関わっていない厚生労働省の職員の方々の心情も穏やかではないはずです。「何てことをしてくれたんだ」という思いなのではないでしょうか。同省で行われた処分は、世間に対するケジメという意味合いはもちろんのこと、コロナ禍対策などで激務を続ける同省の他職員たちに向けたケジメでもあるのだと思います。
組織内外の折り合いをどうつけるか
不祥事が起きたとしても、その内容次第では形式的な処分で済まされるようなケースもあります。しかし、組織を運営する側が見立てを誤ると大変です。処分内容に対する納得感が得られなければ、処分がかえって火に油を注いでしまうこともあります。組織を運営する側としては、世間や組織構成員たちの納得感と、組織運営上の都合とをうまく合致させたいところですが、時折合致させづらいケースも起きてしまいます。そこに、組織運営側のジレンマがあります。
例えば、かつて伝説的営業として名をはせた役員が、部下への悪質なセクハラで問題となったような場合はどうでしょうか。
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