組織を悩ます「不祥事」と「社員の処分」 それでも“もみ消す”企業が多いワケ:正直者をつぶすな(2/4 ページ)
厚労省職員の飲み会問題が波紋を呼んでいる。郵便局でも、内部通報した職員に対する対応が問題となっているなど、企業の不祥事はなかなか絶えない。なぜ、真正面から向かい合わず、“もみ消す”方向の企業が多いのか。
疑いが事実であれば、セクハラ役員は降格などの処分とともにポジションを外されてしかるべきです。しかし、その役員が古くからの得意客と多くのパイプを持っているとしたら、会社側としては悩ましい状況になります。セクハラ役員をポジションから外せば、業績に大きなマイナスが生じることが目に見えているとしても、会社はためらわずに処分することができるでしょうか?
競合の激しい業界であれば、処分によって同業他社に大きなチャンスを与えることになります。一時的な損害では済まされず、長期にわたって業績が低迷するかもしれません。そのような個人のパイプ頼みで経営してきたことを今さら嘆いても後の祭りです。また、上場企業であれば株主や投資家の目も気になります。
悩んだ末に会社はどう判断するのか。倫理観が問われるはずの場面ですが、このような場合、得てして「会社を守る」という名目のもとに、何とかセクハラ役員をポジションから外さないで済む方法を考えるパターンに陥りがちです。
もしセクハラ行為が明らかにならず、会社内の一部関係者のみが知る状況にあるのなら、もみ消してしまい、なかったことにするということもあるかもしれません。社内の大半が認識しているような状況であったとしても、一定期間の減俸と厳重注意などの処分にとどめたり、形式的にポジションを外しつつ、新たなポジションを設置して影響力は保持できるようにしたり、ということも考えられます。その上で、社外に情報が漏れないよう、社内には箝口令を敷くかもしれません。
こうした対処は、社会的には「悪」であるものの、会社内という密室では正義として通ってしまうことがあります。社内での地位が、管理職、上級管理職、役員と上がっていくほど、会社が掲げる“正義”に対して献身的な考え方に染まり、価値観がまひしてしまうことがあるからです。
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