市場は伸びていないのに、なぜ日本企業は「ムチャな数値目標」を掲げるのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
仕事の目標を設定する際、「ムチャな数値だなあ」と感じたことがある人も多いのでは。そんな「ブラック企業カルチャー」が広がりつつあるのではないか、と感じさせられる動きがある。どういうことかというと……。
真面目な人のモラルが壊れていく
こういう話をするとムキになって否定をする人も多いが、日本企業の年功序列、新卒採用、終身雇用、さらには新人のシゴキなど基本システムの多くが旧日本軍の影響を受けていることは、多くの専門家が認めている。
実際、本稿でここまで述べてきた「現実と乖離したムチャな目標」と、それによって真面目な組織人のモラルが壊れて不正に走るという構図も、日本軍が追いつめられていけばいくほど増えていく。それピークになったのが敗戦間際だ。
06年、読売新聞がなぜ日本が膨大な死者を出しながら戦争を継続したかなどを1年に渡って検証した「検証・戦争責任」という大型企画があった。その中で、「現実と乖離したムチャな目標」を押し付けられたことで精神論につき進む日本型組織の典型的な負けパターンがあらわれている箇所があるので紹介する。
『6月6日の最高戦争指導者会議では、資料「国力の現状」が配られ、日本はすでに戦争遂行能力を失った事実が報告された。しかし、会議は国民の精神力を高めるといった処置をとれば、戦争継続は可能とする戦争指導大網を決定し、6月8日の御前会議でも異論は出なかった。御前会議では、豊田副武軍令部総長が、上陸時における敵の損害見込みの数字を都合の良いように改ざんし、報告していた』(読売新聞 2006年8月13日)
いかがだろう、日本企業がデータ改ざんや利益のかさ上げなどの不正に至る構図と丸かぶりではないか。ついでに言えば、「医療現場が限界だ」と叫びながら、根拠が乏しい人流抑制で多くの人に「経済死」に至らしめている一方で、矛盾するような医療体制のデータを出し、五輪を押し切ろうという日本政府の姿とも重なって見える。
70年以上前の話なんて、今のわれわれとは関係ないという人が多いが、実は令和の今も、旧日本軍の組織マネジメントは身の周りにあふれている。学校で子どもたちに「きをつけ」「休め」「前へならえ」なんて軍隊の作法を教えるのは日本だけだ。運動会、部活動、指導者の体罰やシゴキもルーツをたどれば旧日本軍につき当たる。つまり、われわれは生まれたときから「巨大な軍隊」の中で育てられているようなものなのだ。
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