愛知県知事リコール署名の不正はなぜ防げなかったのか? 受託者側から見る、問題の病巣:問われる企業のモラル(1/4 ページ)
問題となっている愛知県知事リコール。不正の責任は受託者側にもあると筆者は指摘する。
愛知県知事のリコール署名を巡る不正問題。これまで署名収集の依頼を否定し続けてきた愛知100万人リコールの会事務局長は、主張を一転させて署名収集を依頼したと認めました。
名古屋テレビは、事務局長に電話取材した内容を「リコール事務局長『署名集め依頼した』一転し認めるも『偽造を依頼したわけではない』」と題して報じています。
事務局長は署名集めの依頼は認めたものの、「署名の偽造を依頼したわけではない」と偽造の依頼については否定しています。しかし、これまで依頼そのものをしていないと語っていただけに、発言の信ぴょう性が疑われても仕方ありません。また、もし発言の通り偽造を依頼していなかったとしても、依頼された側としては、暗に偽造を指示されたと受け取った可能性も否定できないはずです。
もちろん、本当に事務局側は偽造を依頼しておらず、業務受託者側も偽造する意図がなかったのかもしれません。もし、そうだとすると次のような事件だったことになります。
事務局側は、あくまで合法的に署名を集めることを依頼。しかし、その意図を受託者側が過度にくみとってしまい、行き過ぎた忖度や勘違いなどが重なった結果、意図せず不正が発生することとなった悪意なき事件――。偽造の指示はあったのか。また、不正してでもリコールを成立させようとする悪意があったのか。こうした実態の解明は愛知県警の捜査を待つことになります。
ただ、業務の発注者である事務局側から不正指示があったかどうかはさておき、業務を受託した方の立場側から考えても、今回の不正事件には腑に落ちないところがあります。
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