世界中に広がるサイバー攻撃、日本企業は大丈夫なのか:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
世界的に発生する大規模なサイバー攻撃が大きな話題になっている。米国の首都ワシントンDCの警察も被害を受けたわけだが、日本企業は大丈夫なのだろうか。
日本への攻撃は続く
サイバーセキュリティ分野が日本よりも進んでいる米国では14年に、人民解放軍の北米担当ハッキング部隊「61398部隊」のハッカーら5人を刑事訴追し(米史上初)、15年には北朝鮮政府のサイバー攻撃に対し、経済制裁を課す(サイバー攻撃に制裁を課したのは史上初だった)など早くから厳しく対応してきた。その後も、ロシアやイランなどのハッカー集団にも制裁などを行なってきた。
そして、5年以上経ってから、日本でもやっと同じような対応ができることを示したのである。これは大きな前進だと言っていい。
この対策によって、攻撃者への牽制(けんせい)になり、抑止力にもなる。もちろん中国からのサイバー攻撃が止むことは考えにくいが、それでも、これまでやりたい放題だった中国側からの日本に対する見方は多少変わるだろう。
犯罪組織のふりをした政府系ハッキング部隊やスパイ機関などが、ランサムウェアなどを駆使してくる可能性がある。冒頭の米パイプラインに対するロシア政府側の間接的なサイバー攻撃はすでに起きているし、今後も起きると考えておいたほうがいいだろう。
ロシア、中国、北朝鮮――。米国や日本にサイバー攻撃を仕掛ける動機のある国は少なくない。
日本がサイバー攻撃に対処できるよう、今後は法整備などを加速させなければいけない。米国の動きを見れば分かる通り、こうした動きはサイバーセキュリティの本来あるべき姿なのだ。そして日本当局の対応が民間企業を守ることにもなる。ぜひ期待したいものだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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