西武園ゆうえんちで再確認、観光アクセス鉄道の役割と効果:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/7 ページ)
5月15日、西武鉄道はレオライナーこと山口線で「西武園ゆうえんちラッピング電車」の運行を、19日開業の西武園ゆうえんちのアクセスルートとして開始した。観光地と観光アクセス路線は、力を合わせて発展する。ワクチン接種が終わり、観光が再び活性化する前に、観光地とアクセス路線と整備しておきたい。
西武鉄道以外に目を向ければ、小田急「ロマンスカー」、東武「スペーシア」、近鉄「しまかぜ」「伊勢志摩ライナー」「さくらライナー」なども観光地のアクセス列車として誕生し、魅力を高めてきた。東急は自社路線網に観光地がないけれども、グループで古くから伊豆の観光開発に力を入れていた。アクセス路線としては国鉄・JRの特急に任せきりだったけれど、横浜発の「THE ROYAL EXPRESS」は、東横線の終点と伊豆を結ぶ観光アクセスルートを自前で整備したといえる。
これほど長距離ではなくとも、観光地の入口役となる鉄道路線は多い。別府ラクテンチ、近鉄生駒ケーブル、箱根登山ケーブルカー、高尾山ケーブルカーなどのケーブルカーもしかり。観光地までの高揚感を引き立てる存在だ。
残念ながら消えてしまった路線もある。小田急は向ヶ丘遊園駅と向ヶ丘遊園間にモノレールを運行していた。その前身は豆汽車と呼ばれる軽便鉄道だったという。しかし老朽化と向ヶ丘遊園の入場者数減少の影響で廃止された。名古屋鉄道もモンキーパークモノレール線が老朽化の影響で廃止されている。老朽化路線をリニューアルするほどの乗客が見込めなかった。
しかし、日本の鉄道史をひもとけば、京急電鉄は川崎大師、京成電鉄は成田山など、参拝客を当て込んだ参詣鉄道の多くは観光アクセス路線のルーツである。ともに発展し、片方が低迷すれば一緒に沈む運命共同体だ。
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