結局は外圧? 日本のサステナブルファイナンスはどう根付くのか(1/2 ページ)
金融業界でも、ESG投資、そしてSDGsといった従来の流れがさらに加速し、対応は必須となる。ただし実際の対応のきっかけは、日本でお馴染みの外圧によるものになるのかもしれない。
菅義偉首相の「2050年までに脱炭素社会を実現」という宣言とともに、環境対応の機運が盛り上がっている。金融業界でも、ESG投資、そしてSDGsといった従来の流れがさらに加速し、環境対応は必須となる見込みだ。
5月26日にFintech協会が行ったイベントで、金融庁のチーフサステナブルファイナンスオフィサー池田賢志氏と、Fintech協会 アドバイザーでマネーフォワードのサステナビリティ担当 CoPAを務める瀧俊雄執行役員が講演を行った。
サステナブルファイナンスが重要な役割を果たす環境対応
脱炭素を主軸とする環境対応に向けた資金の活用は、金融業界ではサステナブルファイナンスと呼ばれる。
かつては持続可能な社会を作るための取り組みは行政からの資金が主役だった。2000年に国連ミレニアム・サミットで採択されたミレミアム開発目標はMDGsと呼ばれ、環境の持続可能性の確保など8つの目標を掲げた。途上国の貧困問題など一定の成果は残したものの、二酸化炭素排出量は1990年比で50%以上増大し、いくつかの課題を残すこととなった。
MDGsの後継として15年に国連で採択されたSDGsは、目標数を17に増やしただけでなく、取り組み主体を民間企業や各個人とした。MDGsは国連や政府が取り組み主体で資金も限られていたのに対し、SDGsでは民間資金も取り入れることで実現を目指す。
民間資金を導入する方法の1つが、ESG投資などのサステナブルファイナンスだ。企業の運営には資金が必要だが、「サステナブルな社会の実現に向けて取り組む企業に、円滑に流れていく資金フローを実現」(金融庁の池田氏)しようというのが、その狙いとなる。
これは、環境に配慮する企業には銀行などを通じて積極的に資金を貸し出し、また株式市場を通じては機関投資家が、環境に配慮する企業の株式を優先的に買うという方法だ。環境に悪営業を及ぼす事業や、環境対応に消極的な企業への資金の流れを細めることで、企業に行動の変化を促す。
金融庁も「2050年までに脱炭素社会を実現」を受けてサステナブルファイナンス有識者会議を設置。規制や指導によって、金融機関を通じ「ビジネスモデルの転換が迫られる企業をしっかり支援していく」(金融庁の池田氏)という考えだ。
国内最大の機関投資家であるGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)は、17年からESG指数に連動する投資を始め、20年には投資先の国内株式に占めるESG投資の割合は11.3%まで増加。積極的にサステナブルファイナンスに取り組んできた。
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