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仮想通貨を大暴落に導いた“ESG”とは何者なのか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

あのイーロン・マスク氏も太鼓判を押していたビットコインが、今大暴落している。この暴落相場の背景には、中国による規制や、納税のための換金売りのタイミングが重なった点ももちろんあるが、やはり最大の要因はESG懸念に基づくマスク氏の「心変わり」にあると見られている。

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 あのイーロン・マスク氏も太鼓判を押していたビットコインが、今大暴落している。4月には1BTC=700万円の大台を突破し、1年で約7倍にまで膨れ上がったビットコインだが、足元では“ESGに課題がある”という懸念が市場を駆け巡った。20日の早朝には最高値の半分以下となる1BTC=327万円近辺の水準まで下落し、そこから1BTC427万円程度まで急激に戻すという、変動の激しい相場となっている。

 これらの暴落相場の背景には、中国による規制や、納税のための換金売りのタイミングが重なった点ももちろんあるが、やはり最大の要因はESG懸念に基づくマスク氏の「心変わり」にあると見られている。


ビットコインを暴落させたESG(写真提供:ゲッティイメージズ)

“ESG懸念”で仮想通貨市場は崩壊

 米EV企業のテスラや、同宇宙開発大手のスペースXといった「夢ある会社」を率いるマスク氏は、これまで仮想通貨による決済に積極的だった。

 テスラの決済にはビットコインが使える予定であったし、スペースXの決済手段には「ドージコイン」というジョークから生まれたコインを採用しようとするなど、これまで投機の手段に過ぎないともいわれていた仮想通貨(暗号資産)に、現実の利用シーンを提供する姿勢もあって仮想通貨の強気相場をけん引する存在であった。

 しかし、13日にマスク氏は突然、テスラのビットコイン決済の導入をキャンセルしたことで、今度はマスク氏が突如下落相場をけん引することになったのだ。

イーロン・マスク氏のツイート

 テスラはビットコインを使う自動車購入を停止した。我々は、ビットコインの採掘および取引に伴う化石燃料、特に最悪の排ガス源である石炭の急速な利用増を懸念している。

 仮想通貨はさまざまな面で良い考えであり、その将来性が約束されたものであると信じているが、それは環境にばく大なコストを課してはならない。

 テスラは手元に保有するビットコインを売却することはなく、ビットコインがより持続可能なエネルギー由来の採掘になり次第、決済手段としてに採用するつもりだ。そして我々は、ビットコインのエネルギー使用量/決済の1%にも満たない、他の暗号資産の数々に注目している。

 マスク氏からこのような心変わり声明が出てきた背景として、以前からビットコインに対して、環境面、ESG面からの批判が強かった点が挙げられる。なぜなら新たなビットコインの採掘(マイニング)に、コンピュータによる大規模な計算が必要な、いわゆるPoW(プルーフ・オブ・ワーク)を価値の源として採用しているからだ。

 大手マイニング業者の多くは電気代の安い国で大規模なマイニング施設を建設し、化石燃料による発電をエネルギー源として毎年ばく大な電力を消費し、温室効果ガスの排出を促している。

 そのような背景を知ったマスク氏が心変わりするのは理解できないわけではない。なぜなら、同氏がCEOを務めるテスラは、ガソリンという化石燃料を使う従来型の自動車の存在に疑問符を投げかける企業であり、ESGやSGDsといった市場のトレンドも背負う存在だからだ。

 そんな“環境に優しい”企業が、環境に悪いお金といわれるビットコインを決済手段に使うことは、世間や株主にも説明ができにくかったのであろう。マスク氏は持続可能なエネルギーによってビットコインがワークすれば再び決済手段として採用するという姿勢であるが、これは10年単位の動きになり、当分は無理だろう。各業者ができるだけ安く採掘するためにしのぎを削っている業界構造である以上、法による規制が世界的に及ぶなどの極端な事例がない限り、マイニング業者が再生可能エネルギーを使って高い電気代をわざわざ払う理由はないのだ。

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