リストラしたい会社と、しがみつきたい社員 双方を苦しめる「成功体験」の正体:パナソニック報道で話題(1/5 ページ)
パナソニックの“リストラ”報道が話題となっている。人員削減したい企業、そして会社に残りたい社員。双方はそれぞれ成功体験を抱えていると筆者は指摘し、その成功体験を捨てない限り、不幸な人員削減が続くと解説する。
ダイヤモンドオンラインは2021年5月17日、「パナソニック「退職金4000万円上乗せ」で50歳標的の壮絶リストラ【スクープ】」と題した記事を報じました。
現在会社勤めしている人にとっては、特に大きなインパクトを与えるニュースだったと思います。一方で、タイトルにある「退職金4000万円上乗せ」は得なのか、損なのか。「どう受け止めてよいのか分からない……」と戸惑ってしまう人も少なくないはずです。必要な老後資金を「2000万円」とする金融庁の試算が一時話題になりましたが、4000万円はその2倍です。しかし、退職すれば仕事を失い、安定的な収入が得られなくなります。
記事では「人員削減を目的としたものではない」とするパナソニック側の姿勢を伝える一方で、タイトルには「リストラ」とあります。リストラとはリストラクチャリング(restructuring)の略で、本来は構造改革を意味する言葉です。しかし、日本では人員削減の意味で受け取られることが多く、プログラムの中に割増退職金の加算が入っているのであれば、人員削減を目的にしていなかったとしても、早期退職者の応募によって人員が削減されることを視野に入れていることになります。
パナソニックの件に限らず、露骨に人員削減を目的としてうたわず、希望退職の形だったとしても、裏では目標とする人員削減数を設定している場合もあります。それらの計画は経営上の機密に相当するため、外部からは分かりません。そのため、本記事では積極的な退職勧奨を行わずに希望退職を募るケースも含めて、一定の退職者が出ることを視野に入れた施策を総じて「人員削減策」と呼びたいと思います。
早期退職制度などの人員削減策は、リストラの一環としてこれまでにも多くの会社が用いてきた手法です。株式会社のように営利を目的とする組織では、経済的合理性が重要視されます。人員削減という施策が社員の人生を左右してしまうとしても、経済的合理性から判断してベストな選択だと判断されれば実行されることになるわけです。
会社から人員削減策が出されると、対象となった社員は、応募するべきか否か、悩ましい状況に追い込まれます。対象者の“ジレンマ”については、3つの側面から整理することができます。
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