リストラしたい会社と、しがみつきたい社員 双方を苦しめる「成功体験」の正体:パナソニック報道で話題(3/5 ページ)
パナソニックの“リストラ”報道が話題となっている。人員削減したい企業、そして会社に残りたい社員。双方はそれぞれ成功体験を抱えていると筆者は指摘し、その成功体験を捨てない限り、不幸な人員削減が続くと解説する。
(1)経済面の痛み
人員削減策で用いられる割増退職金などの支払いは、当然ながら会社の財政においてマイナスです。人員削減人数にもよりますが、規模が大きい会社であれば億単位の出費も覚悟しなければなりません。退職希望者が想定以上に多い場合は、その分の出費も上積みされます。
仮に営業利益率10%の事業を営む会社が人員削減策を実施した場合、割増退職金の支払い予算が1億円だとすると、採算を取るためには10億円の売り上げに相当する利益を作り出す必要があります。
(2)ミスマッチの痛み
人員削減策として退職者を募ると、得てして優秀な社員から手を上げて辞めてしまうということになりがちです。一方、会社側が退職を望んでいた社員は残ってしまい、終わってみると社員の能力平均値が下がってしまったという事態に陥ることもあり得ます。
当然ながら、会社は残った社員でその後の事業を運営していくことになります。しかし、せっかくリバイバル戦略を立てて取り組もうと思っても、実行できる戦力が伴わなければ絵に描いた餅となってしまいます。
(3)職場環境の痛み
人員削減策を実施すると、職場には不穏な空気が漂うことになります。制度の対象である社員と対象外の社員との間には、見えない感情の壁ができてしまうかもしれません。また、社員の心の中に会社に対する不信感が芽生える可能性もあります。
人員削減策によって職場の雰囲気が悪くなることはあっても、良くなるとは想定しづらいと思います。そして、会社が人員削減策を実施した苦い記憶は社員の中に残り続けることになります。
このように、リストラする側である会社にも葛藤があります。経済的合理性に鑑みた判断とはいえ、これらの痛みを伴うにもかかわらず、なぜ会社は人員削減策を実施するのでしょうか?
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