低迷が長く続いていたのに、なぜ車いすに乗った「バービー」が売れているのか:前年比16%増(2/5 ページ)
米マテル社のバービー人形が売れていることをご存じだろうか。90年代半ばをピークに、その後は売り上げが低迷していたにもかかわらず、なぜこのタイミングで“復活”したのか。背景には同社の戦略があって……。
90年代半ばをピークに、その後は低迷
まず、マテル社にとってバービーは特別な存在だということを強調しておきたい。1959年に発売され、米国のカルチャーアイコンにまでなったバービードールは、同社にとってナンバーワンのブランドであり、最大の売り上げを誇ってきたからだ。
ところが、主要ブランドであるバービーの売り上げは、90年代半ばをピークに落ち込み危機的状態になっていった。そこで、同社は大きな改革に動き出した。
その一つが、近年よく耳にする「Inclusivity(インクルーシビティー/包括性)」に取り組むことだった。インクルーシビティーとは、人種間の平等や多様性などを理解して尊重することだが、現代社会において最も重要視されつつある価値観になっている。
そこで、多様性を尊重するインクルーシブな価値観が求められる時代背景に合わせ、バービーをアップデートさせることにしたのだ。
これまで、マテル社はブロンドヘアに青い瞳の白人をモデルとしたバービードールを中心に展開してきたが、15年に多様性を反映したコレクションを発表した。8種類のスキンカラー、14種類の顔、22種類のヘアスタイル、23種類のヘアカラーと18種類の目の色を組み合わせ、23体ものバービードールを登場させイメージの刷新を行なったのだ。
さらに、16年にはより現実的なボディラインを意識して、オリジナルのバービードールのほかに、カービィー(ぽっちゃり)、トール(長身)、ペティート(小柄)の3つの新しい体型を取り入れたコレクションを発表した。
よりユーザーに近い容姿を再現したバービーをコレクションに加えることで、多様性を尊重していることを強調した。また「Imagination comes in all shapes and sizes(イマジネーションは、すべてのカタチやサイズからやってくる)」というキャッチフレーズを使って、以前より問題視されていたバービーのボディイメージの改善に取り組んだ。
関連記事
- 日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が米国でもヒットしている。このほかにも日本のアニメ・マンガは海外市場で勝負できているのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか。その背景に、構造的な問題があって……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - チキンサンドに何が起きているのか 全米で人気爆発の背景
米国のファストフードで、チキンサンドが盛り上がっている。話題の商品を手に入れるために、長蛇の列ができることも珍しくないが、そもそもなぜチキンサンドが売れているのか。以前からあったメニューなのに……。 - 松戸市にあるパン屋で、なぜお客は1800円も使うのか
「パン好きの聖地」と呼ばれている店が、千葉県の松戸市にあるのをご存じだろうか。「Zopf(ツオップ)」である。1個のパンを求めて、朝から行列ができているわけだが、なぜ人はここの商品を食べたいと思うのか。シェフに話を聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.