94年の歴史に幕 なぜミズノの淀屋橋店に入ると「ワクワク」するのか:週末に「へえ」な話(4/4 ページ)
ミズノの淀屋橋店が94年の歴史に幕を閉じる。もともと本社があったそのビルは、どのような特徴があるのだろうか。ユニークなデザインのエレベーター室があったり、大食堂があったり。その構造は、まるで……。
あえて「98尺8寸」に
時は流れ、エレベーターガールはもういない。大食堂も姿を消してしまった。本社機能も1992年に移転(大阪市住之江区)したので、その後はたくさんある店舗の一つになってしまった。しかし、である。ビルの構造をよーく見ると、細部にわたって“こだわり”がたくさんあるのだ。
例えば、1階の天井の高さである。店内に入ると、吹き抜け感を覚えるほど高い。また、階段を昇っていくと、ちょっとした踊り場があって、そこから1階を見渡せることができる。ここまで書いていて、ある建物の姿が浮かんできた。百貨店である。梅田の阪急百貨店や心斎橋の大丸にも階段があって、そこをトントントンと昇ると、1階を見渡せるスペースがあるのだ。
エレベーターにはエレベーターガールがいて、家族で楽しめる大食堂があって、踊り場から1階を見渡せる……。そうなのだ。ミズノの本社は、百貨店の構造をオマージュしたかのような設計になっているのだ。だから、建物の中に入ると、どこかワクワクするような気持ちがわきあがってくるのかもしれない。
本社ビルを建てる際、創業者の水野には目標があった。それは、高さ100尺(約30メートル)のビルを建てること。しかし、実現しなかった。いや、それは違う。「個人的な責務を果たして安心してはいけない。はるかに大きな社会的な責任が残っている」と自戒の念を込めて、あえて「98尺8寸」にしたのだ。
同社はその後、「カッターシャツ」「オーバーセーター」「ボストンバッグ」「オランダマフラー」などのネーミングを考案するなど、人気商品をたくさん世に出してきた。
現在の本社ビルは31階建てで、高さは485尺(147メートル)である。
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