ワクチン接種のミス報道が、危機管理上喜ばしい理由:褒めたい(1/2 ページ)
コロナ対応の切り札として、菅政権だけでなく世界が取り組むワクチン接種。しかし本格的な大規模接種がやっとのことで始まった日本では、連日保管や接種時のミスでワクチンを廃棄したなどのニュースを見ます。危機対応の視点でこのことを褒めたいと思います。
著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた):
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。
「ミスはあってはならない」「全力で取り組む」といった精神論が大好きな日本の組織。危機管理的には全く意味を持たないスローガンです。竹槍でB29を迎撃できなかったように、精神論は危機には無力、というか危機対応ではありません。
これだけ日常生活を大きく変えてしまったコロナ禍。世界中が対策に取り組む中、ワクチンは最大最後の切り札として世界中が期待しているものです。その貴重なワクチンを取扱いミスで廃棄、保管冷蔵庫の電源コードが抜けた、希釈しなかった……といったどれも凡ミスが日々報道されています。
いかに早く全国民にワクチンが接種できるか、しかも外国製ワクチンの争奪戦をへての貴重なもの。それをヒューマンエラーで正にドブに捨てるとはけしからん! と批判はごもっとも。
でも危機管理上は歓迎すべきことなのです。
精神論をいかに捨てられるかが危機対応の要諦
ミスはあってはならないもの。もちろんです。続発するヒューマンエラーは正にミスそのものだといえます。
「ミスをしてはならない」のはもちろんなのですが、一部の破壊工作を除き、「ミスは起こるもの」というのが危機管理の大原則です。ミスを起こそうと思って起こす人はいませんし、犯罪は悪いこととわかっていても犯罪者は歴史始まって以来、恐らくこの先の未来も絶対にいなくならないのです。
「ミスは起こるもの」この大前提に立って、コロナ禍という危機への対応をすることは、今が非常時だととらえるならきわめて理にかなっています。「ミスをするな」がわかりきっている以上、いくらお題目をとなえてもミスは起きます。一方で、ミスの総量をいかに減らせるかこそが危機対応です。
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