「シニア=無能」なのか? 多くの企業が導入する早期退職・シニア活用施策に潜む違和感の正体:シニア層は外、若手層は内(1/4 ページ)
多くの企業でシニア活用の機運が高まってきている。希望退職・早期退職のニュースも増えてきたが、そこには「年齢差別」が隠れていないだろうか。
年齢とともに徐々に給与が上がっていくという年功賃金は、今も多くの職場の中に浸透し受け入れられているシステムです。年功賃金の考え方には、年齢に応じて勤続年数を重ねた分、仕事能力も向上していると見なして評価するという前提があります。
確かに、ある程度限定された範囲の技能を磨き続けて、職人を育成するようなケースであれば、年功賃金の考え方は比較的当てはまりやすいといえる面もあるかもしれません。しかし、それでも個人差はあります。ある技術を3年で習得できる人もいれば、10年かかっても習得できない人もいるのが実情です。年齢が同じだからといって、腕前も同じというわけでもありません。
年功賃金の考え方が浸透していると、「あの人はまだ若いから」とか「あの人はもう年配だから」と、何かにつけて人を年齢にひもづけて捉えようとしてしまいがちです。そんな考え方が世代の間に壁を作ってしまうこともあります。
2021年5月28日にパーソル総合研究所が発表したシニア人材の就業実態や就業意識に関する調査結果によると、シニア人材の活躍状況が若年社員の転職志向に影響を与えているようです。
調査結果のグラフでは、シニア人材の待遇について「給料をもらいすぎていると思う」と回答した人の比率が、年代が下がるほど高くなっています。世代間隔が離れるほど、壁が高くなっていくようすが伺えます。
その一方で、自社にいるシニア人材が「何をしているか分からない」あるいは「孤立している」と感じている若年社員ほど、転職したがる傾向にあると指摘されています。世代間には壁があるものの、互いの状況が見えずに不信感が生じるなど、影響も及ぼすということです。
21年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、会社には70歳まで社員の就業機会を確保することが努力義務として課されました。多くの会社はもともと「60歳」が定年ですが、65歳までの雇用延長が義務付けられ、その対応にめどがついてきた矢先、努力義務として就業機会の確保が70歳まで延長された形です。この間、シニア層への対応は、会社にとってずっと課題であり続けています。
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