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ネットフリックス通販参入が、「日本のコンテンツ産業衰退」を早めるワケスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

米ネットフリックスがECサイト「Netflix.shop」をスタートした。身近な話ではないので、「それが何か?」と思われたかもしれないが、筆者の窪田氏はこのことによって「日本のコンテンツ産業が衰退するのではないか」と予測する。どういう意味かというと……。

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昭和のビジネスモデルが続く

 なぜそんなことが起きるのか。キーワードは「広告依存」だ。『日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか』(5月5日)の中で詳しく述べたが、アニメ以外の日本の映像作品は、海外では分離されていることが一般的な「制作」と「放映」を民放キー局が一手に掌握してつくられることが多い。ご存じのように、民放テレビ局は広告が収益の柱なので当然、そこで手掛けられる映像作品はどうしても「広告依存」が強まり、クオリティーが低くなる。


日本のアニメ産業は伸びているが……(出典:日本動画協会)

 例えば分かりやすいところでは、クライアント企業のビジネスモデルや商品を批判できなかったり、クライアントが敬遠しそうな政治・社会問題は扱いにくいなど、「制約」が多いので、現実とかけ離れた上っ面をなぞるような浅いテーマやストーリーになりがちだ。キャスティングも演技力より、いかに視聴率が取れるか、いかに事務所の影響力があるかが優先される。

 そんな昭和のビジネスモデルをいまだに続ける日本のコンテンツ産業とまさしく対極に位置しているのが、実はネットフリックスをはじめとした動画配信サービスだ。


ネットフリックスはCGアニメ長編映画「Ultraman (原題)」を円谷プロダクションと共同製作している

 ご覧になっている人は分かると思うが、ネットフリックスなどは広告が一切ない。だから、『全裸監督』のように、地上波だったら広告クライアントが眉をひそめるようなテーマでも、作品としての意義があれば制作・配信ができる。広告ビジネスと距離を置くことで「作品の質」にフォーカスを当てることができるのだ。

 ただ、投資家やアナリストからは、ネットフリックスに対して、「広告ビジネスに参入してもっと収益を上げるべきだ」という声も上がっている。全世界で2億人も会員がいるのなら膨大な個人情報が集まっている。どんな属性の人がどんな映画やドラマを好んでいるのかというところから、その趣味・嗜好に合わせてターゲティング広告でも入れたら、企業がこぞって買い漁ってウハウハ、株主も大喜びだというわけだ。

 しかし、ネットフリックスCEOであるリード・ヘイスティングス氏は、これまで頑なにその可能性を否定してきた。過去には株主にもこんな手紙を送ったほどだ。

 「私たちが広告枠を販売するという思惑を目にしたときは、それはウソだとはね付けてください」(TechCrunch 2020年1月24日)

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