ネットフリックス通販参入が、「日本のコンテンツ産業衰退」を早めるワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
米ネットフリックスがECサイト「Netflix.shop」をスタートした。身近な話ではないので、「それが何か?」と思われたかもしれないが、筆者の窪田氏はこのことによって「日本のコンテンツ産業が衰退するのではないか」と予測する。どういう意味かというと……。
「広告依存」は一利なし
なぜここまで強く主張するのかというと、ネットフリックスに「広告枠」は存在しないが、映画やドラマの中にさりげなく商品やサービスを紛れ込ませる、いわゆる「プロダクトプレイスメント」の疑惑が指摘されているからだ、
その代表が人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』のシーズン3だ。この作品の中に、コカ・コーラやバーガーキングがやたらと登場する。米国の調査会社によれば、それは約1500万ドル相当のプロダクトプレイスメントだというのだ。
プロダクトプレイスメント自体はハリウッド作品をはじめ海外では極めて「ベタ」な手法なので、さもありなんという話ではあるが、ネットフリックス側は金銭の受け取りはないと全否定している。
質の高い映像作品をつくっていくうえで「広告依存」は必要はなく、むしろ成長を阻害する要因だというのが、ネットフリックスのオフィシャルなスタンスなのだ。
さて、ここまで説明すれば、先ほど申し上げたECサイト事業が拡大して軌道に乗れば乗るほど、日本のコンテンツ産業が苦境に追いやられることの意味がなんとなくお分かりいただけるのではないか。
ネットフリックスにとって、ECサイトは単に「人気ドラマでグッズを出したらもっともうかるんじゃない?」というよくあるキャラクタービジネスで収益拡大といった話ではない。作品の世界観を視聴者にさらに堪能させることで、「ファン」として固定化していく。顧客の囲い込みをすることによって、「広告に頼らないコンテンツビジネス」をより強固なものとしていくことが本当の狙いなのだ。
このような戦略が成功するということは裏を返せば、その対極に位置する「広告依存の強い映像作品づくり」が完全に失敗していることになる。それはつまり、日本のドラマや映画業界が完全に世界から取り残されてしまったことを意味しているのだ。
なんてことを断言してしまうと、「なぜそんなことが言い切れる! ネットフリックスは成長するかもしれないが、日本の映画やドラマも成長をする可能性だってあるだろ!」と怒りでどうにかなってしまう人もいらっしゃるかもしれないが、残念ながらその見込みはかなり薄い。
理由はズバリ、お金だ。
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