ネットフリックス通販参入が、「日本のコンテンツ産業衰退」を早めるワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
米ネットフリックスがECサイト「Netflix.shop」をスタートした。身近な話ではないので、「それが何か?」と思われたかもしれないが、筆者の窪田氏はこのことによって「日本のコンテンツ産業が衰退するのではないか」と予測する。どういう意味かというと……。
「現状維持」のままで
これはコンテンツ産業だけではなく、あらゆる業界に言えることだが、日本ではある分野が衰退していけばいくほど、「時代の変化に合わせてシステムを変えよう」という方向に進まず、「現状維持」のままでいかに産業を盛り上げていく方向に流れがちだからだ。
例えば、出版ビジネスが分かりやすい。ネットの普及で雑誌や書籍が売れなくなっている構造不況が続いており、十数年前から出版ビジネスのシステムを根本的に見直すべきだという話になっている。が、話になっているだけで具体的に何かが進んだといった話はほとんどなく、書店や出版社が続々と潰れている。
そんな「現状維持」のまま緩やかに「死」が広がっているこの業界で、ちょっと前まで増えていた現象が「出版点数の増加」である。1冊、1冊の本が売れないので、とにかく種類をたくさん出すことで利益を確保する典型的な「薄利多売」戦略だ。経営の苦しい出版社の場合は、取次から納めた本の代金の一部がもらえるので、たくさん本を出し続けることで「自転車操業」が可能となる側面もある。
ビジネスモデルが破綻しているにもかかわらず、苦しくなればなるほど、これまでのやり方にしがみついてしまう――。これはテレビの「広告依存」にも当てはまる。若者の「テレビ離れ」が叫ばれて、視聴率もかつてより格段に落ちて、広告収入もジリ貧という構造不況が続いており、以前からテレビ局の広告依存のビジネスモデルを根本的に見直すべきだという話になっている。が、現実はその真逆のことが進行しているのだ。
ビデオリサーチの関東地区民放5局の総出稿量のデータを見てみると、90年代は2万5000秒台だったものが10年代になると急増して、18年には2万7000秒を突破している。
「ネットが台頭してきてテレビがピンチです」と叫びながら20年前と比べて30分以上もテレビCMの時間は増えている。構造不況で売れなくなったので、薄利多売でとにかく延命しようする「出版点数の増加」と構造はまるっきり同じだ。
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