“暗号スマホ”とはどんなモノか 「FBIのビジネス流儀」はとことん:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
FBIの暗号化メッセージアプリ「ANOM」を使った国際おとり捜査で、800人以上が逮捕されたという。「暗号」「おとり」といった言葉が出てくると、映画の世界を想像するが、どのようなモノなのか。
暗号スマホとは
今回の捜査は、2018年に暗号スマホを提供する業者が逮捕されたことから始まる。FBIが前年からマークしていたこの業者は、「ファントム・セキュア」という暗号化スマホを提供して、利益を得ていた。仲間4人で運営していて、FBIによると「将来性のあるビジネス分野」だったという。
暗号スマホとは、どんなモノなのか。FBIによれば、暗号化したコミュニケーションを送ったり受け取ったりでき、データも暗号化して保存することが可能だという。サービスを提供するためのサーバは、パナマや香港に置いていた。ただ通常のスマホと比べるとかなり制限があって、普通の電話番号にはかけることができないし、インターネットも使えない。そのぶん、外部から覗き見されることはない、という触れ込みだった。
この暗号スマホを利用するには、2カ月から6カ月の契約プランから選ばなければいけない。6カ月のプランなら、スマホの料金と合わせて2000ドルほどの料金設定だった。
もちろん、その辺のお店で購入はできない。口コミ式で紹介制。ファントム・セキュアのユーザーのみが他のユーザーを引き入れることができるシステムになっていた。
もはや世界的に暗躍する犯罪者だけをターゲットにした、かなりニッチな市場だと言える。それでも、ファントム・セキュアでオーストラリアなどを中心に数千億ドルを荒稼ぎしていたという。
この業者は結局、有罪判決を受けた。禁錮9年の実刑と8000万ドルの罰金を課されることになるのだが、FBIはこの暗号スマホの製作を担当していた人物(この人物も麻薬で逮捕歴があった)を“協力者”としてスカウトする。犯罪組織が必要としているのは、警察から逃れられる安全なコミュニケーション。そこを突こうとしたのだ。
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