猫用おやつ「ちゅ〜る」はなぜ売れる? 飼い主も“やみつき”にする戦略に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
猫のペットフード「CIAO(チャオ)ちゅ〜る」がロングヒット中。ラインアップも増えており、きめ細かいニーズに対応している。開発の背景は?
世界の猫を喜ばす
いなばでは、19年に第3新工場を稼働させる際に、工場の壁面に「世界の猫を喜ばす。」というスローガンを掲げた。
同社は、半年毎に100点もの新商品を発売するが、顧客からのリクエストで商品化されるケースもある。猫の前に、飼い主を喜ばすマーケティングを実践している。
飼い主と猫を喜ばせる実践の1つとして、CMモデルの猫をシーズン毎に募集していることが挙げられる。同社では「ちゅ〜る」のCM用動画を、スマホで簡単に作れるアプリ「ちゅーるメーカー」をリリース。飼い主が監督、猫が主演で、自分たちだけのCMを制作。キャンペーンに応募すると、オーディションにより次のテレビやWebのCMに出演できるチャンスが開ける。
同社は無償で応募動画を利用する権利を持つという規定になっている。わざわざCM用の猫をプロダクションに依頼し、スタジオなどの撮影場所を探し、プロのカメラマンを確保する必要がない。CM制作費の経費削減にも寄与している。
同社・広報によれば「猫のおやつは、キャットフードのうち約20%のシェアを占める」とのこと。その猫のおやつで「ちゅ〜る」は圧倒的なブランドだ。この優位性は、日本人が猫を飼い続ける限り、揺るぎようもない。
動物園の飼育員が、ライオン、トラ、ハイエナ、キツネ、ツキノワグマなどネコ目の動物たちに「ちゅ〜る」を与えて反応を見るという、興味深い動画もYouTubeに公開されている。
20年秋には、やわらかいゼリー状で「ちゅ〜る」5.7本分の容量を持つ「ちゅ〜るタワー」を発売。「まぐろ」など5種類のフレーバーがある。おやつにするならとりわけて与える商品で、食事用である。
なお、同社・広報では「ちゅ〜る」の犬版「Wanちゅ〜る」も好調とのこと。「ちゅーるメーカー」の犬版「Wanちゅーるメーカー」もリリースして、公募された中から111種類のCM動画を、今年3月21〜31日にテレビで流す「Wanちゅ〜る111キャンペーン」を実施。約3万件もの犬への愛情を感じる動画が集まった。
「ちゅ〜る」の猫から犬への横展開に、さらなる事業発展の期待が集まる。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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