「ドラレコ」の売れ筋価格が急上昇 “高付加価値化”が止まらない根本的な理由:マーケティングの視点から分析(2/5 ページ)
ドライブレコーダーが急速に普及している。なぜ、カー用品の大ヒット商品に育ったのか。筆者の分析によると……。
ドラレコが普及したきっかけ
ドラレコの歴史はまだ浅く、15年ほどです。当初はタクシーや運送業など、主として事業用自動車に乗る運転手の安全運転意識を向上させ、普段の運転状況を記録することを目的に設置していました。自家用車で見かけることはほとんどありませんでした。
2008年3月、あらゆる事業者がドラレコの必要性を認識する事件が起きました。東京都練馬区内でタクシーに乗っていた男がドライバーを刃物で脅し、売上金を奪って逃走。車内にはドラレコが搭載されており、これが犯人特定につながりました。
しかし、ドラレコは「フロントガラスの視界が遮られる」とか「商品購入・取付費用がかかる」などの理由からすぐに普及はしませんでした。08年3月時点でのドラレコ普及率はタクシーが49%。一方で、自家用車はわずか0.1%(国土交通省調べ)という状況でした。
その後、導入した事業者の事故率が著しく低下したり、一式5万円を超えていた導入コストが下がり始めたりしたことで、自家用車への普及率も少しずつ増えていきました。
カー用大手のオートバックスが店頭でドラレコの取り扱いを始めたのは05年12月ごろ。実際に一般客からの問い合わせが増え始めてきたのは約6年前だそうです。
そんなドラレコ市場拡大の契機となったのは、やはり一つの事故でした。12年4月に京都で発生した「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」です。19人が死傷したこの事故により、一般人の認知度が向上。自家用車に搭載する人が増え始めました。
ドラレコ普及の決定打となったのは、17年6月に発生した「東名高速夫婦死亡事故」です。ニュースで何度も取り上げられ、その後もさまざまな「あおり運転問題」が世の中を騒がし、対策意識が急速に高まっていきました。その結果、17年7月からドラレコ販売台数が急増。ドラレコで自身の安全を確保するという新たな動きがでてきたのです。
18年には一部メーカーで供給が間に合わず、売り切れが続出しました。その結果、専門に製造販売してきた企業だけでなく、一般家電メーカーもドラレコに参入。市場が一気に拡大し始めました。
ドラレコは過去の痛ましい事故や事件がきっかけとなって広がってきた特殊な市場背景を持っている商品なのです。
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