「ドラレコ」の売れ筋価格が急上昇 “高付加価値化”が止まらない根本的な理由:マーケティングの視点から分析(4/5 ページ)
ドライブレコーダーが急速に普及している。なぜ、カー用品の大ヒット商品に育ったのか。筆者の分析によると……。
最新のドラレコ市場の変化
今年になって売れ筋の価格帯は1台3万円台半ばになったと言います。1年前は1万6000〜9000円程度だったはずなのに、突然5割程度上がっているのです。なぜでしょうか。早速、筆者は都内のカー用品店や家電販売店のドラレコ売り場の視察に行ってきました。
それほど規模が大きくない店舗なのに、店頭付近では全体の1割程度のスペースを割いてドラレコ特設コーナーをつくっていました。総アイテム数は27。そのうち、本体価格が3万円を超えるアイテム数は10。実に3割以上が3万円台です。確かに、店頭価格は高くなっています。
特に今、人気となっているのが、前方と後方を同時に撮影できるカメラ、全方位撮影できる360度カメラ、周囲が暗くてもナンバーや車の特徴を撮影できるフルハイビジョンカメラなどを備えた高付加価値のドラレコです。
前後2カメラ・360度撮影の商品になると5万2580円です。これに工賃が加わります。搭載する車種にもよりますが、前後カメラで1万9800円(BMW3シリーズの場合)ですから合計7万円強になります。それでも「品切れが続く商品もあります」(カー用品店スタッフ)とのこと。今や、カー用品店においては稼ぎ頭となっています。実際、オートバックスでは20年4月、5月とカーエレクトロニクス部門の売り上げは30%以上伸びており、特にドラレコとカーナビが好調です。
店頭のスタッフは「基本的には交通事故の記録をとるためにつけられる方が多いのですが、24時間映像を撮り続けるカメラも人気がありますし、エンジンを切っている間も撮影できるドラレコもあります。振動があると、その瞬間の映像を残せるような商品です」と説明します。運転中の妨害だけでなく、盗難やイタズラ対策も考えた高付加価値商品が出てきているのです。
8割が「あおり運転を受けたと感じたことがある」
パナソニックは「あおり運転とドライブレコーダーの使用状況に関する調査」を、日常的に運転している20〜60代の男女2000人を対象に実施しました。
同調査によると、約8割が「あおり運転を受けたと感じたことがある」と回答しています。これは、思ったよりも多い数字です。
また、「あおり運転被害」で思い当たるきっかけの約3割は「周りのクルマの流れよりスピードが遅かった」、約4割は「特に思い当たらない」とのこと。意味なく妨害行為を受けている現実もあるようです。さらに、運転中イライラした際にあおり運転につながりかねない行動をとる「あおり運転予備軍」は約3割、特に40代以上男性の6割超が「あおり運転」をしていた可能性ありと回答しています。自分自身が加害者にもなりかねない現状であり、決して他人ごとではないと感じさせられました。
ちなみに、同調査対象者のドラレコ搭載率は4割超。今後の購入で重視する機能は「GPS機能」「前方後方同時録画機能」が上位でした。
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