ビフォーアフターで見る、本当にあった1on1失敗例 「部下の話を聞けない上司」編:典型的な1on1失敗例とは(3/4 ページ)
筆者が実際に見た、失敗する1on1の典型とは。そしてそれをどう改善すればよいのか。ビフォーアフターで成功する1on1、失敗する1on1を見てみる。
上司A:最近のB君の営業成績はかなりいいね。自分ではどう感じているのかな。
部下B:そうですね。新規で山田工業が契約できたのが大きかったです。とても難しかったのですが、キーマンの方に繰り返しアプローチしたのが良かったです。
上司A:粘り強く頑張ってもらったね。本当にお疲れさまでした。どうだろう。自分なりに何か課題は感じているのかな?
部下B:そうですね……もっと成果を上げるためには見込み先が足りなくて……。
上司A:なるほど。見込み先がないと、今後の数字が作れなくなるかもしれないね。
部下B:そうなんです。でも、なかなか時間が取れなくて……。
上司A:時間が取れないんだね。その時間は、どうしたら取れるようになるかな?
部下B:うーん、そうですね。難しいですけれど、日中にオフィスで事務作業をしていることが多いので、見込み先に行けるように事務作業を帰社してからやるようにして、優先順位を変えてみたいと思います。
上司A:それはいい案だね。営業成績は大切だから、B君の事務作業がうまく回るように周りのメンバーに協力するように僕からも伝えておくよ。
部下B:ありがとうございます! さらに頑張って成績を上げたいと思います!
どうでしょうか。実際にはここまでうまくいかないかもしれませんが、このように「部下の考えを聞いて、部下に答えを出させる」ことだけで、解決の糸口が見つかるかもしれません。
典型的な1on1失敗例(2)部下の「SOS」を拾えない
次に多かったケースは、このような会話内容でした。
上司A:新入社員のC君は、成長しているよね。
部下B:そうですね。でも、まだまだできていないところもあって……。
上司A:そうだね。まだ電話応対などの基本動作ができていないかな。
部下B:そうですね。電話応対はまだまだ本当にダメですね。毎回口酸っぱく受け答えの手順を教えているのですが、なかなか覚えてくれなくて。
上司A:まあ新入社員だからね。焦らなくてもいいんじゃないかな。これからは、C君にどういう仕事をさせようと思っているの?
部下B:そうですね、徐々に仕事の範囲を広げてあげたいので、いろいろと話をしているんですが、彼も悩んでいるというか……。
上司A:そうだね。まだ新入社員だからね。自信もないから、しっかり足元の仕事をやってもらえればいいんじゃないかな。焦らずに引き続きしっかり面倒を見てもらえるかな。
部下B:そうですね、分かりました。
さて、どうでしょうか。部下と新入社員の状況について話をしていますが、この面談の中で、上司は部下の話を受け止められているでしょうか。
この部下は「新入社員がまだ課題を抱えている」「新入社員と話をしているが悩んでいる」ということを伝えようとしていますが、上司は部下の話を聞ききれず、せっかく出かかった部下の言葉を流してしまっていることが分かると思います。
ここで大事なことは「上司が部下の言葉に注目して、深く聞いてあげること」です。部下の口から出てくる言葉は、どのような背景があって出てきた言葉なのでしょうか。その真意は、部下に聞いてみないと分かりません。
このケースでは「電話応対などの基本動作ができていない」と上司は考えていますが、もしかしたら部下は、その他にも原因もあるかもしれないと考えているのかもしれません。また、この部下は「新入社員は悩みを抱えている」と伝えようとしていますが、上司は「新入社員なんだから焦らなくていい」と、一方的に上司の考えを押し付けてしまっています。
部下自身が悩んでいることは、明確に言葉に表せないことが多くあります。答えが出せずに悩んでいる部下の気持ちは、言葉の端々に出てきます。その言葉に注目し、さらに深く聞いてあげれば、悩んでいる部下の解決の糸口が見いだせるかもしれません。
なぜ、上司は部下の話を聞けないのか
さて、上司と部下の面談においては、このように「上司が部下の話を聞けていない」ケースが起こりがちです。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。それにはいくつかのポイントがあります。
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