ハイブリッドやEVのバッテリーはいつまでもつ? 寿命を決める温度管理:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
EVで気になるのは、やはりバッテリーの耐久性だ。寿命はバッテリーの特性によっても異なるが、実際の車両では温度管理などのマネジメントによるところが非常に大きい。
クルマの電動化が急加速している。これまでEVの実用性の低さにまったく興味を示していなかったドライバーも、昨今の電動化が盛んな自動車メーカーの動きに、次なる愛車候補としてEVやプラグインハイブリッド(PHV)を考え出している人が増えている。
そんなユーザーにとって気になるのは、やはりバッテリーの耐久性だ。新車時の航続距離はカタログスペックの7〜8割だとしても、3年後、5年後、10年後にそれはどこまで維持されているのか。それによって下取り価格がどう変わるか、中古のEVを購入してもいいのかというように疑問も広がっていく。そこで今回はEVのバッテリーについて考えてみたい。
バッテリーは品質と使い方次第
EVの走行用バッテリーは、PCやスマートフォンのバッテリーと基本的には同じものだ。現在は最もエネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリーを搭載し、急速充電にも対応させることで短時間充電と、十分な航続距離を実現している。しかし、新車時はいいが、2、3年でバッテリーが劣化して航続距離が極端に短くなってしまうのでは、と疑っている人も少なくないようだ。
日産「リーフ」の初代モデル販売時、タクシー会社が補助金と急速充電を利用して導入したものの、2年足らずで新車時の半分も走れないほどバッテリーが劣化したことが話題になった。これがEVのバッテリーに対する信頼性について、ネガティブなイメージを広めてしまったと思われる。
トヨタ「プリウス」も初代はニッケル水素バッテリーのマネジメントが不十分で、すぐに蓄電容量が減少しほとんど亀状態(バッテリーの蓄電量が少なくなると亀のマークが点灯し、充電を優先するため加速性能が低下した)になったが、二代目以降はバッテリーの寿命はかなり長くなり、三代目では驚くほど長寿命になった。
ただでさえ採算の合わなかった初代プリウスでは、能力の低下してしまったバッテリーを無償交換するという高い勉強代まで払って、トヨタはバッテリーマネジメントのノウハウを学んだ。つまり、これらはバッテリーの品質や性能ではなく、バッテリーのマネジメントが稚拙だったことが大きな原因だ。
もちろんバッテリーの品質自体も寿命や安全性には大きく影響する。日本製のEVやハイブリッド車が日本メーカーのバッテリーを採用しているのは、性能面だけでなく品質の高さを重視しているからだ。
関連記事
- アイドリングストップのクルマはなぜ減っているのか? エンジンの進化と燃費モードの変更
アイドリングストップ機構を備えないクルマが登場し、それが増えているのである。燃費向上策のキーデバイスに何が起こっているのか。 - シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択
ハイブリッドの駆動方式は3種類に大別される。その中で、日本で主流にすべきはシリーズハイブリッドだと断言できる。トヨタのTHSは素晴らしいシステムだが、制御が複雑でノウハウの塊ともいえるだけに、トヨタ1社でスケールメリットがあるからビジネスモデルが成り立つ(といってもトヨタも利益を出すまでは相当な年月が掛かっているが)ものだからだ。 - トヨタTHSは、どうして普及しないのか そのシンプルで複雑な仕組みと欧州のプライド
前回の記事「シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択」を読まれた方の中には、こんな疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。「シリーズハイブリッドなんかより、シリーズパラレルで万能なトヨタのハイブリッドシステムを他社も利用すればいいのでは?」 - トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?
トヨタは最新の運転支援技術を採用した新機能「Advanced Drive」をレクサスLSとMIRAIに搭載。さらに、先日の上海モーターショーでは新しいEVを発表した。そして驚いたのは、トヨタが今さら水素エンジンにまで触手を伸ばしてきたことだ。 - SKYACTIV-Xは見切り発車か確信犯か 最新のICTに熟成を委ねたマツダの強かさ
小改良されたSKYACTIV-X。この新世代のガソリンエンジンについては、まだまだ伝え切れていない情報が多い。誤解や曲解、勘違い、無知ゆえの受け売りによる間違った情報も、巷(ちまた)にあふれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.