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トヨタTHSは、どうして普及しないのか そのシンプルで複雑な仕組みと欧州のプライド高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

前回の記事「シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択」を読まれた方の中には、こんな疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。「シリーズハイブリッドなんかより、シリーズパラレルで万能なトヨタのハイブリッドシステムを他社も利用すればいいのでは?」

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 前回の記事「シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択」を読まれた方の中には、こんな疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。「シリーズハイブリッドなんかより、シリーズパラレルで万能なトヨタのハイブリッドシステムを他社も利用すればいいのでは?」

 確かに2019年、トヨタは2万3000件以上にも及ぶTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム=プリウスやヤリスのハイブリッドなどに用いられているハイブリッド技術の名称)の特許を30年まで無償で公開することを発表している。

 これは従来の自動車産業で考えれば、とんでもないことだ。エンジン車よりもEVよりもはるかに難しいハイブリッド車の特許技術は、非常に貴重なもの。自動車産業に限らず、重要技術の特許を保有している企業にとっては、その特許権とは生命線ともいえる。

 にもかかわらず、トヨタと提携して、あるいは自動車メーカーから開発を請け負う欧州のエンジニアリング・コンサルタントなどと協力して、トヨタTHSを利用しようとする企業が現れない(少なくとも表面上は)。筆者がシリーズハイブリッドの普及を提唱しているのは、実はこれが大きく関係している。

 それはトヨタTHSに魅力がない、将来性がないということではない。むしろ実際はその逆で、トヨタTHSは実に良くできているハイブリッド技術であり、今後もさらに進化が望めるものだ。トヨタが生み出した技術の中では、間違いなくナンバーワンの傑作メカニズムと言っていいだろう。


先代の30プリウスのトヨタTHS II。電気式CVTへのモーターによるアシストを、便宜上そう呼んでいるだけと勘違いしている人も多い。実際には一組の遊星ギアで無段変速を実現し、セルモーターと発電機と走行用モーターとブレーキを兼ね備えさせている

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